基礎体力研究所
第57回談話会:2018年7月18日 17:30〜
「個性を育む組織メカニズムの解明とチームづくり」
…芳地 泰幸 先生(日本女子体育大学・准教授)
第57回基礎体力研究所談話会が7月18日に行われました。今回のゲストは、今年度より本学に着任され、「スポーツ経営学・組織行動学」がご専門である芳地泰幸先生です。今回の談話会では、先生の研究における興味・関心だけでなく、近年取組まれている「Jクラブのユース(U-18)チームを対象としたチームビルディング(TB)」の活動内容や、「ウェアブル端末を用いた組織内コミュニケーションの測定」に関する研究成果についてもご紹介いただきました。
ユースチームにおける選手育成ではその心理的特性から、競技的能力(技術や戦術、運動能力)の向上だけでなくサッカー選手として必要な心理-社会的スキルの獲得・強化が求められます。そこで、先生は、東大版総合人格目録(Todai Personality Inventory;TPI)やアドバイスシート、背景探検など、これまで企業の人材育成や組織開発場面で活用されてきた専門ツールを援用したチームビルディング(TB)・プログラムを考案され、その実践についてご報告いただきました。さらに、ウェアブル端末を用いた組織内コミュニケーションの測定では、これまで測定困難とされてきた組織内の複雑なコミュニケーションを最新のウェアラブル端末を用いることで可視化できること、定量的に評価できることを紹介いただきました。そして看護組織を対象とした調査の結果、組織内のコミュニケーションにはコミュニケーションをつなぐキーパーソン(連結者)が存在していること、若手よりも中堅・ベテランのコミュニケーション量が多い事、アサーティブが高い者は高い者と、低い者は低い者と会話する傾向があることなどが明らかになりつつあるとご報告いただきました。
先生は“経験(実践)なき理論は空虚であるが、理論なき実践は無謀である“を座右の銘に、個性が輝くチームづくりや組織のダイナミズムの解明に向けて日々研究・教育活動に励まれています。そして、「組織では自己犠牲を払い、組織の利益を優先するべきか?」「組織では個人の意思や感情は押し殺した方が良いか?」をはじめ、「チームが有機的に機能するとはどういう状態か?」「組織と個人がWin-Winになるマネジメントとは?」「メンバーの個性が輝く組織とは?」など、私たちにとっても身近で実践的な問を、談話会を通して投げかけていただきました。
当日は、多くの方にご参加いただき、多くのご質問と活発な議論が行われました。様々な場面で活用できる内容であり、非常に興味深いお話をして下さった芳地先生ならびに談話会にご参加下さいました皆様に心より感謝いたします。