基礎体力研究所
第53回談話会:2016年7月20日 17:15〜
「発育期サッカー選手における筋形態発育と運動能力の発達について」
…手島 貴範 先生(日本女子体育大学附属基礎体力研究所・博士研究員)
基礎体力研究所第53回談話会が7月20日に開催されました。今回お話ししてくださった手島貴範先生は、「バイオメカニクス、発育発達」がご専門で、思春期前後のスポーツ選手に焦点を当ててトレーニング方法を研究されています。談話会では、大腿部筋厚の発育と蹴能力の発達との関連、身体発育の個人差と蹴能力との関連、また持久的および間欠的走能力の発達と試合中の競技パフォーマンスについてお話しいただきました。
蹴動作における脚スイング速度、ボール速度、ボール飛距離は、年齢とともに増加しますが、これらの増加は特に12〜15歳の間に顕著でした。脚スイング速度は、ボール速度および飛距離との間に正の相関がありましたが、高校生と大学生を比較すると、同程度の脚スイング速度であっても、大学生の方がボール速度およびボール飛距離が大きくなり、高校生と大学生間の技術差が存在することが示唆されました。
次に発育と蹴能力の発達の個人差を検討するために、アローメトリー解析を用いて身長の発育に対する蹴能力の発達を検討しました。ある身長区間においては、筋厚、脚スイング速度、ボール速度は、身長の約2乗に比例して、ボール飛距離は身長の約3乗に比例して発達し、それ以前の区間よりも顕著に発達することが分かりました。発育状況によって蹴能力の発達が異なることが示唆されました。
最後に、走能力の発達についてお話しいただきました。サッカーにおいて持久的走能力指標として12分間走、間欠的走能力指標としてYo-Yo intermittent recovery(Yo-Yo IR)テストがあります。Yo-Yo IR1では高強度有酸素性運動を繰り返し行う能力、Yo-Yo IR2では有酸素性と無酸素性運動が組み合わさった高強度間欠的運動能力を反映した指標といわれています。これらを用いて関東大学サッカーリーグ1部に出場するレギュラー選手と非レギュラー選手を比較すると、持久的および間欠的走能力はレギュラー選手では有意に高いことが分かりました。また間欠的走能力には試合における守備ポジションの特異性があることが分かりました。これらの走能力の発達を検討すると、思春期にやや向上し、18歳以降に大きく向上することが分かりました。サッカーを競技レベルで継続するには、高い有酸素性および無酸素性走能力が必要であることが示唆されました。
当日は、大学内外の先生方、大学院生、学部生、合計17名もの方々が、談話会にご参加くださりました。発育発達、性差、サッカーにおけるスキルに関する質問や議論が活発に行われ、盛会となりましたことを心より感謝いたします。