基礎体力研究所

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第52回談話会:2016年1月20日 17:15〜

「膝前十字靭帯損傷予防の可能性」
…永野 康治 先生(日本女子体育大学・講師)

基礎体力研究所第52回談話会が1月20日に開催されました。今回お話ししてくださった永野康治先生は、「スポーツリハビリテーション」がご専門で、理学療法士や日本体育協会公認アスレティックトレーナーの資格もお持ちでいらっしゃいます。男性よりも女性において、より多く発生する膝前十字靭帯(anterior cruciate ligament: ACL)損傷について、選手の身体特性や競技特性などのリスクファクター、受傷時に多く見受けられる動作における受傷メカニズム、さらに予防や受傷後のリハビリテーションのための運動方法についてご紹介してくださいました。

受傷メカニズムとしては、方向転換動作および着地動作中では、膝関節の軽度屈曲および外転位であること、脛骨の内旋角度変位が大きいことが、先行研究から示されています。永野先生は男女間の比較研究から、女性では片脚着地動作において、男性よりも脛骨の内旋角度変位が大きいことを明らかにし、女性のACL受傷率の高さの原因として示唆されました。また、動作間のキネマティクスを比較することによって、ACL損傷のリスクファクターになりうる動作を検討され、脛骨の内旋角度変位については、両脚着地動作よりも、片脚着地動作中において、さらには方向転換動作において最も大きいことが明らかになりました。

女性が持つ動作特性について、180度の方向転換動作を対象として膝関節以外のキネマティクにも注目して検討されました。女性は動作の切り返し時に、膝屈曲角度、体幹前傾角度が小さく、支持脚側に体幹が傾斜(股関節外転)し、膝関節外反トルクが大きくなることを明らかにされました。女性は、動作切り返し時に深く膝関節や股関節を屈曲できないこと、体幹を素早く切り返せないことが、膝関節外反トルクを大きくし、ACL損傷のリスクを高めている可能性があるとのことでした。

そこで、永野先生が予防および受傷後のリハビリテーションとして提案するトレーニング方法は、体幹を支持脚側に傾斜させずに、体幹の前傾、膝関節屈曲を維持した状態で、スプリットスクワットや着地動作、方向転換動作をふらつかなくなるまで練習を重ねるというものでした。体幹を屈曲しない(背筋が丸くならない)ように、また前額面から観察した際には、骨盤部が左右水平に維持できるように練習させると良いとのことでした。

当日は、先生方、大学院生、学部生、合計22名もの方々が、談話会にご参加くださりました。談話会終了後にも、個別に質問や議論が活発に行われ、盛会となりましたことを心より感謝いたします。

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