基礎体力研究所

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第44回談話会:2012年2月15日

「アンチ・ドーピング〜最近の話題から〜」
…夏井裕明

基礎体力研究所の第44回談話会が2月15日に行われました.今回は,「スポーツ医学・形成外科」がご専門の夏井裕明先生に「アンチ・ドーピング〜最近の話題から〜」と題してお話をして頂きました.夏井先生は「微小循環」や「アンチ・ドーピング」を研究のテーマとされています.
今回の談話会では,今年7月にロンドンオリンピックが開催されることもあり,アンチ・ドーピングの取り組みについて,禁止薬物の種類やドーピングの現状を交えてお話し下さいました.2010年における世界のドーピング検査は約26万件行われ,その内,陽性数は2790件と陽性率は1.08%となっています.一方,日本国内では,約55000件のドーピング検査が行われ,陽性件は5件であり,陽性率は0.09%と非常に低くなっています.日本のドーピング率は世界の10分の1ですが,検査数自体が少ないために陽性率も低いのではないかと考えられています.今後,東京オリンピック誘致のためにも,検査数を増やすことが課題となっているとのことでした.最近5年間における日本国内のドーピングは,29例見つかっており,ボディビル選手が5例と一番多くなっています.2012年1月に発効された国際基準の禁止薬物には,筋肉増強作用がある蛋白同化薬,気管支喘息の治療薬として用いられるベータ2作用薬,尿中の薬物濃度を低下させ検出しにくくする利尿薬などが指定されています.さらに,自己血の輸血などによる酸素運搬能力の強化などが禁止されています.サッカー,イングランド代表のデビット・ベッカム選手が使用したことで有名になった高気圧酸素カプセルは,酸素の供給を高める可能性があるとして,北京オリンピック前に問題となったが,明らかな効果は認められないとして禁止にはなりませんでした.
2011年10月には,国内で初めて未成年者のドーピングが見つかり,2ヶ月間の資格停止処分となっています.世界のスポーツ界では,陸上短距離選手であったベン・ジョンソン選手の筋力増強剤の使用やアテネオリンピックハンマー投げのアドリアン・アヌシュ選手の尿すり替え疑惑など,選手側と検査側とのいたちごっこが続いています.将来的には,遺伝子操作によるドーピングが出てくる可能性もあるとのことでした.
当日は様々な分野の先生方が参加して下さり,幅広く活発な議論が行われました.とても興味深いお話をして下さった夏井先生ならびにご参加下さいました先生・職員の皆様ありがとうございました.

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