基礎体力研究所
学術フロンティア
学術フロンティア概要
本プロジェクトのねらい
本学の研究プロジェクト「運動時における循環調節機構の統合的解明-スポーツによる健康・体力づくりプログラムの構築に向けて-」は、2004年度文部科学省学術研究高度化推進事業の学術フロンティア推進事業(平成16年度~平成20年度)に選定されました。本プロジェクトでは課題とする研究を推進して学術的貢献を目的とすると同時に、運動時の循環調節研究の拠点としてハード・ソフトの整備を推進することをねらいとしている。
1.健康・体力づくりプログラム構築にむけた運動時循環調節の研究の推進
運動に対する循環系の適応は極めて巧妙にできていると考えられる。複雑な仕組みになっていることは、ひとつの系が破綻しても他の系が補償し、生命維持に必要な循環システムを破綻させないような安全弁が用意されているということであろう。安静時につくられた循環システムの安定性は、運動という外乱によって一端はその整合性が破られる。そこで、運動時の循環系は、運動遂行と生命維持という二つの方向で再調整される。しかし、運動に対する循環系調整の機序はまだ十分解明されていない。本プロジェクトでは、運動時の循環調整に関する科学的エビデンスを運動特性と関連させて統合的に解明し、蓄積されたエビデンスを基盤とし、健康・体力づくりのための運動プログラムの構築に向けた提案を行うことを目指した。
5年間のプロジェクト研究期間の最初の3年間(2004-2006年度)は、運動時の循環調節に関するエビデンスを集積することであった。運動時の生体応答研究の基盤となる運動時の運動単位の動員特性を明らかにすると共に、人を対象とした循環研究に必要な非侵襲的計測法(近赤外線分光法、超音波法など)の改善等を進めながら、1)運動時の血流再分配と2)循環系に対するセントラルコマンドを中心とした神経性調節に焦点を当てて研究が遂行されてきた。中心的課題である「運動時の血流分配に関する研究」と「運動時のセントラルコマンドが循環に与える影響に関する研究」はプロジェクトメンバー全員が参加する共同研究として行われた。さらに、特化したテーマについては、個別に研究を実施し、プロジェクト全体で討議して統合するという研究体制をとった。これに関する個々の成果は、2006年11月の中間報告会で公表されている。さらに、それらを統合した運動時の循環調節の機序については、2008年11月の国際シンポジウムで報告した。
プロジェクト最後の2年間(2007-2008年度)では、それまでの成果を様々な身体特性を持つ対象者で検証することと、運動の継続が循環調節に与える影響を横断的、縦断的に明らかにすることを中心的な課題とした。そして、それまでに得られたすべての知見を基に、スポーツによる健康・体力づくりプログラムの構築に対して、循環調整の観点から提案を行うこととした(2009年2月)。
2.運動時循環調整研究の拠点整備
多様な因子によって調節されている循環調節の研究を、様々な運動様式、運動強度・時間、様々な姿勢や環境の影響等を、性、年齢、身体特性の異なる対象者で検証するには多くの研究者による共同研究が必要である。本プロジェクトでは本研究所と他の機関の研究者との共同研究や本研究所を拠点として若手研究者が参加する研究プロジェクトについてもいくつかの試みを行った。本プロジェクトの実施による拠点整備により、遂行母体である日本女子体育大学の研究活性化と研究拠点の形成はプロジェクトの大きなねらいであった。
3.研究組織
本プロジェクトの研究組織は以下の通りである。
研究者氏名 | 所属・職名 | プロジェクトでの研究課題 |
---|---|---|
加賀谷淳子 (平成16~18研究代表者) |
日本女子体育大学名誉教授 | 骨格筋への血流分配と筋からの血液還流 |
定本朋子 (平成19~20研究代表者) |
日本女子体育大学教授 | 運動時の内臓器官および 脳の血流動態とその調節機構 |
加茂美冬 | 日本女子体育大学准教授 | 運動様式、運動強度、運動時間および 筋代謝からみたモーターユニットの動員特性 |
奥山(清水)靜代 | 慶應義塾大学体育研究所講師 | 運動時の心拍出量の変化と各種血管への血流分配 |
佐藤耕平 | 日本女子体育大学附属 基礎体力研究所講師 |
運動時の呼吸循環系変化に対する 中枢性・末梢性の神経調節 |
斉藤 満 | 豊田工業大学教授 | 運動時の筋交感神経活動からみた中枢指令および 反射性制御の調節機構 |
長田卓也 | 東京医科大学講師 | 有疾患者における運動および 筋虚血に対する血流調節プロファイル |
Marco Ferrari | University of L'Aquila (Italy)教授 |
脳循環・代謝測定用近赤外線分光法の開発 |
Valentina Quaresima | University of L'Aquila (Italy)教授 |
近赤外線分光法による運動時の脳循環・代謝の変化 |
岩館雅子 | ポスドク研究員 (現・日本大学助教) |
運動準備期のセントラルコマンドの働き |
笹原(上田)千穂子 | ポスドク研究員 (現・明星大学講師) |
筋の酸素代謝特性と運動時循環応答との連関 |
澁谷顕一 | ポスドク研究員 (現・長崎人間科学大学准教授) |
運動時における一次運動野の酸素化動態 |
最終報告会
2009年2月28日(土)、学術フロンティア推進事業(平成16~20年度)最終成果報告会が開催されました。
国際シンポジウム
2008年11月29日(土)、学術フロンティア推進事業(平成16〜20 年度)最終年度国際シンポジウムが開催されました。
中間報告会
2006年11月25日、第17回研究フォーラム・学術フロンティア研究成果中間報告会が開催されました。
発足シンポジウム
2004年10月23日(土)、学術フロンティア発足シンポジウムが開催されました。