オンライン授業での困難を乗り越え、103名で踊った「野外上演法」

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2020年5月から新型コロナウイルスの影響により始められたオンライン授業。野外で集団となってマスゲーム作品を踊る、ダンス学科の必修科目「野外上演法」のオンライン授業をご紹介します。今まで誰も経験したことのない状況下で学生たちはどのようにダンス創作に取り組み、どのような学びを得たのでしょうか。5名のリーダーと主に映像編集に携わった4名の学生にインタビューをしました。


リモートでのコミュニケーションの難しさを乗り越えて、作品が完成した

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「野外上演法」の授業をオンラインで実施する。映像を作る。と聞いたときはどう感じましたか?

中村 「まず野外じゃない『野外上演法』って、どんな授業になるの?と思いました。」
柴崎 「マスゲームができないので『野外上演法』が成り立たなくなるのではと思いました。」

作品テーマを『Hair spray』に決めた理由は?

原田・柴崎 「例年『野外上演法』の授業では作品テーマにミュージカル作品を選ぶことが多いです。『Hair spray』はミュージカル映画で、出演者全員で踊っているシーンが多いからこの作品をテーマにしました。動画の構成などは、映画の流れを参考に起承転結を決めていきました。」

オンラインで進行する上で大変だったのはどんなところでしたか?

中村 「リーダーの会議時間を設定することですね。リーダーも人数が多いのでなかなか時間が合わず、
深夜にミーティングをして朝を迎えたこともありました。」
大内 「振り付けをほかの学生にするためのレクチャー動画をつくったのですが、各自で撮影した動画を集めてみたら、振りが左右逆になっている人がいることも。映像にどのくらいのサイズで映るか、動画の送付方法など最適な方法を探りながら、課題をひとつずつ解決していきました。」

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作品を創り上げてみて、また授業を終えてどんな実感がありましたか?

山中・中村 「映像での仕上がりを見て感動しました!形にできたことに拍手ですね。」
原田 「正解がない中で、考える力がつきました。」
高柳 「細かなことでも情報共有しておくことの重要性を感じました。」

授業期間中、リーダーたちはいろいろな悩みを共有し、課題を解決していったことで絆が深まったと振り返ります。
続いて担当教員である渡辺碧先生に、この授業のねらいとオンライン授業の感想を伺いました。


「今だからこそ、出来ることをやろう」と言い続け、完成した映像は、想像をはるかに超える出来栄えでした。

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2年生の必修科目「野外上演法」の授業は、野外でのマスゲームによる舞踊作品を学生が主体となって創作・上演し、その中で舞台上演との違いが何かを学びます。学生たちが将来、学校教員となった際には、ダンス指導ができる体育教員として、集団演技の振付・作品構成力・集団をまとめる指導力などが求められます。この授業では、そこで必要となる知識や方法を実践の中から学びます。

集団が密集して踊ることを主に行うこの授業を、オンラインでやらなければならないと最初に聞いた時は、「一体、どうしたらよいのか・・」とすごく不安に思いました。悩みに悩んだ末、授業の展開方法として、学生が創った作品を映像に残そうと考えました。

誰もが経験したことのないコロナ禍の中、授業を始めるにあたっては、学生たちに「私もどのような方法が良いかを考えるけれど、皆にも、どうやって進めていくべきかを一緒に考えて欲しい」と伝えました。

そうして始まったオンライン授業。授業の進め方はまず、クラス単位で話し合いをしてアイディアをまとめ、その中から良いアイディアを合体させていき、作品全体の流れを作っていきます。コロナ禍以前の授業の進め方は、授業時間中に学生同士で話し合いをしていく方法でしたが、昨年の5月に授業を始めた時は、外出自粛要請の真っ只中で、対面で会うこともままならない状況でした。

そのため、授業時間に私からやるべきことを提示し、クラスごとにクラスをまとめるリーダーと、リーダーを助ける副リーダー、動画編集担当者を立てた上で、オンラインなどで話し合いをしてもらいました。本来ならば、対面で話すことをオンラインで進めているので、やりにくいことも多く、様々な課題が出て来るだろうと想定していましたが、学生たちは私が思った以上に自分たちで道を切り開き、きちんと作業を進めてくれていたのには、驚きました。

とはいえ、本来は集団で踊る授業ですし、それを楽しみに入学してくる学生もいるので、「野外で皆と踊りたかった。」という声は出て来るだろうと予測。発表の形が映像作品になってしまっても、学生たちには前向きになってもらうために、「今だからこそ出来る事だし、今しか出来ない事をしよう」と言い続けました。

外出自粛要請が解除されてからは、クラスごとに対面で集まり、踊りを合わせ、撮影する機会が数回出来ました。その時にとても驚いたのは、学生全員が振付をしっかりと覚えていたこと。例年練習の際、振付を忘れる学生が、少なからずいるのですが、オンラインでしか振り写しが出来なかったにも関わらず、それが逆に練習しやすかったり、他の人の進捗状況が分からない分、「きちんとやらなければ」という緊張感が個々に働いたりしたのかもしれません。

[7月に大学で行われたリハーサル風景]

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授業を受けた2年生は、とにかく元気な学年なので、最初は「ちゃんとまとまるだろうか・・」と心配していたのですが、仕上がった動画を観て、「こんな作品が創れるなんて!」と、そのクオリティの高さに驚きました。

今回は新型コロナウィルスの影響で、こうした授業展開にならざるを得なかったのですが、学生たちの中には映像編集が上手な子も多く、私自身もこのオンライン授業によって、多くの学びがありました。

特に、各クラスや全体をまとめていたリーダーたちの動きがよく、皆のために時間を割いて動いてくれたこと。そして何より2年生全員が一丸となってこの映像作品を成功させようとしてくれたことが、コロナ禍の中でも、素敵な一つの作品を創り上げることが出来た一番の要因だと思います。

[エンディングでは大学の陸上競技場でのダンス撮影が叶った]

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オンラインでの創作ダンスをまとめ上げたリーダーと映像編集者たち

中村 絵梨香 (B-1クラスリーダー、学年総リーダー)

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大変なことがたくさんありました。各クラスのリーダーを通じてのコミュニケーションだったので伝言ゲームが起きてしまうことも。音声動画で情報共有するなどの工夫をしました。

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大内 涼歌 (A-1クラス リーダー)

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クラスメートから直接意見をもらうことが多く、それが全体の意向と合わないこともあり、その間で板挟みになったりしながらも、クラスをまとめることができました。

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柴崎 莉良 (A-3クラス リーダー)

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オンラインで授業が進んだので、会議をしないとみんなの意見が聞けなかった。1回の会議で、クラス全体の希望や要望をどの位しっかりと受け取って実現したらいいか、バランスに悩みました。

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原田 優 (B-2クラス リーダー)

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みんなが集まる撮影日に、どうコロナ対策をするべきか、各リーダーで話し合い、調べました。振付をオンラインで伝えるのが大変でした。

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横井 伽歩 (B-3クラス リーダー)

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クラスをまとめるのが大変で、先生によく相談しました。テキストで説明してもみんなの解釈がそれぞれで、伝える難しさと細かく伝えることの大切さを知りました。

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白木 優衣 (映像編集者)

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各自が自分のダンスを撮影するため、なるべく統一感が出るように指示を細かく出したり、調整したりしました。形になったものを観たときは達成感がありました。

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狩野 慧成 (映像編集)

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編集を担当していたのは演技のような動きが多いパートでした。自分でいったん撮影して編集してみてからみんなに公開するなど、どうやったら面白いものに仕上がるか試行錯誤しました。

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高柳 里菜 (映像編集)

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動画を集めてみると、振付が左右逆の人がいて撮影し直してもらったり、編集で各自の踊りのスピードを調整したりしました。クラス動画ができたときには感動しました。

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山中 七海 (映像編集)

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編集を頑張ったので、できあがった映像を見たときはうれしかったです。みんなの意見を聞きながら、大人数をまとめるのは時間がかかりましたが、いい経験になりました。

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オンライン授業という形であっても、しっかりと集団をまとめ作品を創り上げたリーダーたち。また映像作品という形は、構成で見せることが出来ない分、映像編集的な視点でダンスを考え・魅せる経験になったようです。完成した映像作品からは、振付や映像のコマ割りの一つひとつに、「今だからこそ」という学生の思いが凝縮した密度の濃い作品に仕上がりました。コロナ禍という逆境に負けることなく、これからもダンス学科らしい自由なクリエイティビティを発揮してほしいと思います。

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