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スポーツ・サービス系
フィットネスクラブ・マネージャー

船津 由美(2004年度・スポーツ科学専攻卒)

フィットネスクラブ


「ありがとう。」って言ってもらえる仕事です。

学生時代はラクロスが命だった船津さんは、フィットネスクラブでマネージャーをやっています。働きだして6年目ですが、フィットネス業界を取り巻く状況もだんだん変わってきているようです。
<2010.06収録>

何をやっているの?

フィットネスクラブでマネージャーとして働いています。総合職として入社して、今年で6年目になります。

マネージャーというのは?

各お店には支配人、その下にフロントのマネージャーと、ジムマネージャーがいます。フロントのマネージャーは、見学や体験に来た方の接客や、会員を増やす販促活動など、主に営業的なことをやっています。ジムマネージャーは、スタッフやインストラクターの管理や、経理的なことをやっています。私はジムマネージャーです。

どんな仕事ですか?

パソコンに向かう仕事では、今期は入会する人と退会する人がこれくらいだから、売り上げはこれくらいみたいな数字を出したりして、お店の予算組みをします。もちろんお客様の声を実際に聞ける現場は大切な場所なので、デスクワークだけでなく現場にも出て、スタッフと一緒に色々な方のフォローをしています。

あとは、年間のレッスンのスケジュールを組み立てたり、インストラクターやスタッフのシフトを決めてスケジュールの管理をしたりしています。レッスンの内容や教え方が、社内マニュアルに沿っているかどうか見るのも仕事のひとつです。

お店には、スタッフ、インストラクター、トレーナーなど、色んな肩書きの人たちが働いています。ちなみに私たちが「スタッフ」と呼んでいるのは、学生やフリーの方などのアルバイトさんのことです。

うちのクラブはスタジオレッスンを売りにしていて、週に200本以上のレッスンがあります。スタジオレッスンは、社員やスタッフも、研修を受けて検定に通ればレッスンができますが、外部のインストラクターが主力です。インストラクター専門の派遣会社から来てもらったり、フリーの方にお願いしています。

私は、年に3回くらいインストラクターの方たちにカウンセリングをしていて、例えばレッスンにあまりお客様が集まらないなどの場合は、「このレッスンはもっとやさしくしましょう。」とか、逆に「レベルを上げてみましょうか?」とか、「スケジュール、どうします?」といった感じでインストラクターと一緒に考えていきます。

インストラクターはどういう風に振り分けているんですか?

ヨガなどは、独自に開発したレッスンのメソッドがあったりするので、派遣会社に依頼することが多いですね。派遣会社の人材は安定していますが、レッスン料はちょっと高いんです。エアロビクスなどは個人の方にもお願いしています。レッスン料は1本あたりの基本の金額があって、集客が多いとかレベルが高いとかによって、そこからプラス1,000円という風に変わってきます。

勤務時間はどんな感じ?

社員は9時間拘束の1時間休憩で、8時間労働と決まっています。早番、中番、遅番とあって、早番の時は、6時半にはお店に入ります。都心店は7時からオープンしていて、7時から並んで待っているお客様もいるんですよ。動いていないと生きていけない人たちです(笑)。早番の時は5時半起きですが、夕方の3時半くらいには仕事が終わるのでその後は自分の時間が取れます。

遅番は、午後2時45分からで、夜は12時半くらいまでお店にいます。お客様が帰られてからも、清掃をしたりします。遅番の日の朝はゆっくり寝ていられますが、たまに遅番の次の日が早番の時があるんですよ。そうなると寝るのが午前2時くらい、起きるのは5時半なので、ちょっとつらいんです。感覚がおかしくなるので、なるべくそうならないようにシフトを調整してもらいますが。

中番は、昼の12時から夜の9時で、早番と遅番の間を埋める感じです。中番がいちばん楽なようですが、中途半端に1日つぶれちゃうので意外ときついんですよ。私は、遅いか早いかどっちかがいいですね。

お休みは?

週休2日ですが、でもお店は土日・祝日は関係なしなので、交代で週に2日休んでいます。その他に月1回の公休というのがあって、それは好きなところで選べます。だいたいみんな、週休とくっつけて3連休にしています。私は今は、金土がお休みで、あと遅番、遅番、中番、早番、早番みたいな感じでやっています。

大学時代は?

ラクロス命でした(笑)。卒論もラクロス。どういう場面からシュートにつながる確率が高いか、ビデオを見ながらスコア取って分析していました。石崎研究室でした。ラクロス部で石崎先生のところで習ったのは、たぶん私くらいじゃないですか。先生は元気で明るくて太陽みたいな人でした。

その頃はどんな仕事をしたいと思っていました?

小学生の頃から体育の先生になりたいと思っていました。その頃大好きだった先生は、元々教師じゃなく、一般企業に勤めてから教師になった方で、私にはすごくキラキラして見えました。私も先生になるなら、いったん社会に出て企業の働き方を知ってからなるほうがいいと思いました。その方が色んな知識を伝えられる気がしたので。

大学2年生の頃からスポーツクラブでアルバイトをしていたのもあり、3、4年生の頃は社会に出るならスポーツクラブかなと思っていました。

シュウカツは?

ラクロス命だったので、シュウカツを始めたのはぎりぎり4年生の秋でした。ラクロス部の子はほとんどそんな感じで、「どうにかなるだろう。」って思っていました。私は秋採用で募集していたスポーツクラブを見つけて、2社受けました。

元気さが良かったのか、勢いに乗って2社ともとんとん拍子に内定が取れました。自分のカラーに合っている気がした、今の会社に決めました。人事の方の人柄や人材を大切にする社風にも惹かれました。

入社した時はどんなことから始めたの?

今は事前研修が充実しているようですが、私たちの時は言葉使いや接客の基礎ぐらいで、あとはお店でという感じでした。長年いるベテランのアルバイトの人たちは、新入社員より詳しく専門知識もあるので、そういう人たちに鍛えられ、入会の手続きとかジムのマシンのことなど、実地で覚えていきました。

最初に配属になった国分寺店は、おばちゃんたちがお弁当をひろげながら運動をやっているような、アットホームな雰囲気のお店でした。学生のアルバイトも多くて、お店が第2の学校みたいな感じでした。私たち社員はお姉さんのような存在でした。

私も、ピラティス、ヨガ、アクアビクス、クロールなど、色んな研修を受けてレッスンをやっていました。なんと言っても、皆さんがのんびり和気あいあいと、ほんとに生活の一部みたいな感じで運動をやっているのが、私が描いていたお店の理想にぴったりでした。2年間いて、渋谷店に転勤になりました。

渋谷店は?

渋谷店は国分寺店とは全くの別世界でした。渋谷の雑踏に混じって通勤し始めた時は、最初はここでやっていけるのか不安になりました。お店はとてつもなく忙しく、次から次へと見学やら体験やらのお客様が来館されて、私はお客様をご案内をしながら、残された時間でスタッフのシフト表を作ったり、入退会の状況をパソコンでダァーって打っていく毎日でした。

でも私には忙しいのが合っていたらしく、渋谷店で働くのがだんだん苦にならなくなり、楽しくなってきました。色んな情報があって、スタッフも知識を持っているし、フリーのトレーナーにパーソナルレッスンの指導法を教わったり、トレーニングをバリバリやって覚えたりしました。環境が刺激的で、働いていても充実感がありました。

渋谷店はうちのフィットネスクラブの1号店で、1号店で働いているという誇りもありました。オープン当初は、駅のところまで何千人と行列ができて、それを何名かの社員で対応して大変だったようです。レオタードでエアロビクスが全盛の時代で、会員証がプレミアムカードのような感覚で、スポーツクラブに通うことがステータスだったようです。渋谷店には1年ほどいて、池袋店に転勤になりました。

今のお店はどんな感じですか?

どちらも都心店ですが、池袋店は、昼間は国分寺店のようにおばちゃんたちがワイワイやっているアットホームな感じで、夜になるとがらっと雰囲気が変わり、渋谷店みたいに若い人やサラリーマンで溢れかえる、2面性のある店舗です。今はどちらの店の経験も生かせています。今のお店は来月でちょうど2年になります。

お客様はみな健康志向が強くて、フィットネスクラブに通うのが特別なことではなくなってきました。そういう意味では、ほんとに生涯スポーツになってきましたね。

でもここ3年くらいで、フィットネスクラブもだんだん厳しくなってきました。私が入った頃までは調子が良かったんですけど、今は30分フィットネスなど、ライバル会社も増えてきて競争が激しいんです。お客様も気軽に入って気軽にやめる感じ。景気が悪いので、スポーツクラブに1万円使うんなら別に使うという方もいたり。

だからお店にとっては、今がすごく大事な時期だと思います。特に都心店は頑張らないといけません。マネージャーも管理するだけじゃなく、スタジオのレベルや接客サービスを上げるために現場に立って、スタッフと一緒にお店を盛り上げていこうとしています。私も専門性を身につけるために、研修を受けて必死になって勉強して、パーソナルトレーナーの資格を取りました。

パーソナルトレーナーってどんな資格ですか?

色々ありますが、私が取ったのは「全米エクササイズトレーナー協会」(NESTA)という団体の公認資格で、「パーソナルフィットネストレーナー」(PFT)という資格です。アメリカの試験の日本語版を日本で受けられます。その資格を取ると、うちのクラブではパーソナルトレーナーとして、運動指導をしていけます。

ジムでは、お客様の目的を聞いて例えばシェイプアップだったらこのマシンという風に提案しますが、パーソナルトレーナーはより専門知識を持って、例えば「この筋力が足りないからこういうトレーニングをするとこうなりますよ。」という風に詳しくご説明しながら、お客様のからだの改善や調整をしたりしていきます。

パーソナルトレーナーは個人の方が多く、柔道整復師や鍼灸師の資格も持ってパーソナルとコラボさせたりしている人もいます。スポーツクラブだけじゃなく市民体育館などでも活動していたりしています。自分なりの技術があるのでプライドもあり職人みたいな感じです。

試験は難しい?

例えば、「この筋肉はどの関節とどの関節がつながっていて、ストレッチするにはどれくらいの時間でどういった動きをすれば効いてくるか?」とか、「年齢何歳くらいの人がこれくらい痩せるには1日何パーセントの負荷でどんな運動を何ヶ月間やればいいか?」とか、「メタボリックのBMIの計算の仕方は?」とか、そんな質問がだいたい200問です。

教科書があってベースはそこから出るんですけど、その中に大学で学んだはずの生理学とか解剖学とかいっぱい出てきて...。

体育大生卒ならではですね。

もう1度、大学の授業出たいです(笑)。大学の教科書を引っ張りだしてきて、「そう言えばこんなの習ってたな。もっとちゃんと聞いとけば良かった。」って思いました。授業には出ているはずなんですけど、頭はラクロスに行っていたので。今聞けば「ああ!」って思うんでしょうね。教科書が今頃になって役に立っています。

社員の目から見てインストラクターはどう写ります?

インストラクターの方はいつも体動かしているから、みなさん生き生きとしていて外見が若いです。実際の年を聞いたらびっくりしますよ。ヨガなどの調整系のインストラクターと、エアロビクス系のインストラクターがいて、ヨガなどは自分も心を休められたりしますけど、エアロビクスなどは動くのでやっぱりハードですね。

レッスンの本数が減ると収入も減っちゃったりするので、体が資本というかタフじゃないとやっていけないと思います。でもレッスンを通してお客様とつながっていけたりするので、その点はやりがいがある仕事だと思います。

働いていて楽しいことはなんですか?

やはり、お客様に「ありがとう」って言ってもらえることかな。例えばプールで、自分が伝えたことでお客さまの泳ぎがコロッと変わったり。自分の目の前で変化がわかり、一緒に喜び合える。それが楽しいですね。お互いが求め合っているというか、お客様も必要としてくれるし、私たちもお客様がいることで知識をお伝えできる。

どんな職業の人でも、スタジオやプールには生徒として来られるじゃないですか。企業の社長さんもいれば、70歳過ぎてからクロールを覚える方とか、いろんな方がいて。「明日は孫が遊びに来るから、レッスンには出られないの。」とわざわざ言いにきてくれたり、人生相談をされる時もあります。毎日同じ時間に来て黙々とトレーニングされている方が急に来なくなったりすると、なんとなく心配になったりします。

逆に大変なことは?

正直、仕事の壁にぶちあたったりすることもあります。「ああ、もうやめたい。」って思う時もあるんですけど、「じゃあ、自分は他に何ができる?」って自問してみると、やっぱり「からだとか健康、そういうところから自分は離れられないんだな。」と思います。

これからの夢は?

この先結婚することがあったとしても、仕事は続けていきたいですね。仮に会社をやめたとしても、パーソナルトレーナーとして、からだと関わるお仕事はしていきたいと思っています。同期の友達は、今となってはみんな教員をしているか、幼児体育をやっているかです。一般企業でスポーツクラブは私だけになっちゃいました。

非常勤や臨時採用の教員になって部活のコーチなどもやりながら、学んだ知識や資格を活かしてスポーツクラブや市民体育館などでトレーナーをするのもいいと思います。発表することや人をまとめることは、今の会社で鍛えられたので、生徒がスタッフと同じと思えば、先生になってもたぶん緊張しないと思うんです。

プライベートでは、学生時代にやっていたラクロスを今年からまた始めました。今、コーチと現役と両方でやっています。コーチは、パーソナルトレーナーの紹介で、大学(ニチジョじゃないですが)のコーチがいないから来てくれないかって頼まれて。コーチをするなら自分でプレイもしなければと思い、クラブチームを探して現役に復帰しました。

ニチジョOGチームのようなバリバリ強いところにも入りたいんですけど、「社会人になって先輩に怒られるのも嫌だしなあ。」と思って(笑)。自分なりに楽しみながらトレーニングで体を作って、時々試合に出られればいいかと。

私も代表だった時もありましたけど、この前の練習では、ちょっとショックでした。気持ちだけは前にいくけど、下半身が...というやつです。このボールは取れると思っても、足がついていかなくて、だんだん前のめりになってデデーンと転んでしまって。「もっとトレーニングしないと。」と思いました。

遅番の日は、朝練で学生たちを見てからそのまま勤務して、土曜日は、クラブチームで自分の練習をしています。また、閉館後にスタジオで、スタッフと一緒にラダートレーニングをやったりしています。現役復帰するには、自分のお店でトレーニングできるのでいい環境ですよ。疲れますけど、動けるうちに動いておこうと思って。

フィットネス業界に行きたいニチジョ生に、アドバイスはありますか?

やはり人と接する仕事なので、話し方にも人間味というか、そういうところを必要とする仕事です。面接では、「自分はこういう人間で、こういう魅力があるから、活躍できます!」って、ちゃんと伝えられるかが大事だと思います。別にすごいことじゃなくてもいいんです。私は「笑顔です!」だけで突き通しましたから。

知識は入社してからも学べますが、ないよりはあったほうが、お客さまとの話の幅も広がるので断然いいですね。部活を頑張っている子は忙しいと思いますが、スルーしてきた部分をもういっぺん目を通すだけでもいいと思います。運動生理学、解剖学、そのへんは大事だなと思いました。

インストラクター、パーソナルトレーナー、スポーツクラブの社員、それぞれ実際にどういうことをするのか、学生の時は良くわからない人もいると思います。フィットネスクラブでアルバイトをしてみるのもいいと思います。最初からインストラクターやパーソナルトレーナーになる必要もなくて、まずはこの業界のいろんなことを知ってからでもいいんじゃないかなと思います。

「自分はこれ。」っていうのを決めている人は、その仕事をやっている人に聞いてみたほうがいいと思いますね。いきなりインストラクター、トレーナーになっても、じゃあ実際に生活できるのかという問題もあります。インストラクターであれば、個人でスポーツクラブのオーディションを受けてやっていく人もいますが、派遣会社に入ってある程度安定したところからやる道もあります。

パーソナルトレーナーはアメリカの資格ですが、無理にアメリカに行かなくても取れます。どういう資格を取るかによりますが、私が今回取ったNESTAは入門としてはいいと思います。どっちかと言うとフィットネス系に強い資格です。大学時代に講習を受けて、試験を受けてみるのもいいでしょう。

ニチジョでは、在学中に健康運動指導士の受検資格を得ることが出来ます。どっちかと言うと市民体育館などは、健康運動指導士のほうが印象はいいみたいです。トレーナーを目指すなら、健康運動指導士は取っておいてもいいと思います。

また、フィットネスクラブには試験の補助制度などもあるので、最初はそういうところに入って資格を取り、そこからステップアップしていくのもいいと思います。実際に、元社員でパーソナルトレーナーをやっている人もたくさんいます。

自分磨きをしていけば、仕事のレベルアップにもつながるので、自分と仕事が成長するのは同じかなと思います。そういう意味では一生勉強なんですね(笑)。

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