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菊池 直子(2004年度・スポーツ科学専攻卒)
■ホテル勤務
生涯に残るイベントをプランニングする仕事。
菊池さんは、ホテルでウェディングプランナーとして働いています。働きだして6年目ですが、最初の2年間は仕事がつらくて大変だったようです。しかし婚礼部門に配置転換になって、仕事がおもしろくなってきました。
<2010.08収録>
何をやっているの?
ホテルの婚礼部門で、ウェディングプランナーをやっています。ホテルに見学に来た方の接客に始まって実際の挙式に至るまで一貫してお世話させていただいています。週に多いときで3組、平均して1、2組のペースで、挙式を担当しています。今までにたぶん150組以上はやっていると思います。責任も重いですけど、仕事は楽しいですよ。
入社してすぐ今の仕事を?
いいえ。今の部署に変わったのは、入社して2年くらいたった時です。それまでは大変でした。入社してすぐ、宴会サービス部門に配属されました。大きなパーティからちょっとした宴席まで色々あるのですが、そういった席の配膳が主な仕事でした。それなりに知識が必要な仕事で、新入社員はあまり行かせない部署でした。
最初にレストランなどでサービスを経験していれば良かったのですが、トレーも持ったこともない私は全てを一から覚えていかなくてはなりませんでした。そこではホテルで委託している配膳会社の社員と、ホテルの社員が一緒に働いていました。
普通ならホテルの社員が現場を仕切ると思うんですけど、そこは逆でした。ずっとやっているというのもあって、配膳会社のベテランの人が全てを仕切っていて、新入社員の私は現場で厳しい指導を受けました。
ほんとに細かいことまでひとつひとつ指摘されて、最初は怖かったですよ。その仕事に慣れるまでが非常に大変で、色んな人に相談したりもしましたが、取りあえず3年はやらなきゃと思って耐えていました。
まわりの社員は?
ホテル業界ではそれが普通なのかもしれないですけど、みんなやめていっちゃうんですよ。先輩も私が入って入れ替わりでやめちゃったし、同期もやめていって、気がついたら私しかいなくなっていました。もともと宴会部門に来る社員は少ないので、私しか社員がいなくなり、配膳のベテランの人とひとりで対決(笑)しなくちゃならなくなってしまいました。
「もうやめたい。」と思って、上司に相談したら「婚礼部門の方に来ないか?」とお誘いを受けました。でも、私は元々営業をやりたくて入ったし、その頃には精神的にもまいっていたので、最初は「ウェディングには興味がないです。」って断ったんですよ。
でも「今よりはいいかも知れない。せっかくのチャンスだしとりあえずやってみよう。」と思い、部署を移りました。
ウェディングの仕事を始めてみて?
最初は興味がなかったんですけど、やっていくうちにおもしろくなってきました。
ウェディングプランナーの仕事は、うちのホテルの場合、新規のお客様を取り込むところから始まります。会場見学に来たカップルに接客をして、お申し込みをいただけるよう営業していきます。営業は、新規接客でひと月に何件成約しなければならないというノルマがあります。
お客様がうちのホテルでやるとなったら、どんな式をしたいのかイメージを聞いていきます。衣装や写真撮影、披露宴や料理、席次表、引き出物など、色々なことをお客様と打ち合わせて決めていき、本番の式に臨みます。
もちろんそれぞれの部門には専門のスタッフがいるので、衣装だったら衣装屋さんとか、キャンドルサービスだったらお花屋さんとか、そういう人たちの窓口になってトータル的なことをウェディングプランナーがやるという感じです。
普通、接客と挙式は担当者が別の場合が多いんですけど、うちではお客様との信頼関係を築くために、最初に接客した社員が挙式までずっと担当するようにしています。
ウェディングの研修を受けたりしたのですか?
挙式に関することは、ある程度勉強しました。でも宴会部門で仕事をしてきたので、会場のことや色々なサービスはわかっていて、そういうところは今までの経験が強みになりました。
どんなことが楽しい?
楽しみは、やっぱりお客様と直接お話できることですね。配膳の仕事の時にはなかったことでした。
お客様と、一緒に半年間、作り上げていくじゃないですか。生涯に残るイベントなので失敗できないっていうプレッシャーもありますが、終わったあとに「菊池さんが担当で良かった。」って言われると、「ああ、やっていて良かった。」と思います。
お客様と仲良くなれて「うちのホテル、いいよ。」って人に言ってもらえたら、またそこでつながりができるじゃないですか。
知り合っていくうちに一緒に盛り上がってくる?
最初は、「新郎さんクールだなあ」って思っていても、挙式まで半年間ずっとお会いし続けて、お二人が出会ったきっかけとか、仕事で大変な思いをして今に至ったお話を聞いたりすると、根はいい人なんだってわかったり、その人の意外性も見えておもしろいですよ。
でもお話しするのは、主に新婦さんのほうです。新郎さんにあまり話しかけても新婦さんが嫉妬しますから、やはり新婦さんをメインにしてあげないと。そういうところは、結構気をつけていますよ。新規で接客する時は、新婦さんとずっと目を合わせるようにして、新郎さんには聞かれた時くらいにしか目を合わせないようにしています。
仕事で大変なのは?
席次表とか、引き出物を決めたりとかするのは、時間がかかりますね。あとは、見積もりを出した時に、「うわっー、こんなにいってる。」って言われたりもするので、そういうのを調整するのも仕事のひとつです。
正直、大変だったお客様もいますよ。でも「ああこの人苦手」と思って話すと、絶対態度に出ちゃうので、好きにはなれなくてもなるべくいいところを見つけて、興味を持って話すようにしています。
嫌だなと思うお客様にあたっても、それも一つの勉強だと思って、半年間お客様に合わせて、一緒につきあっていくようにしています。この仕事では、やっぱりクレームっていうのは怖いんですよ。「担当代えてくれ。」とか、お花屋さんと波長が合わないとか、引き出物が割れてたとか。
そ れでも、「これは」というお客様にあたってしまった時は、あらかじめ上司に言っておくようにしています。そうすることで出来る限りトラブルをさけられるように。みんなに気をつけてもらうように「このお客様は、こういうことがあるので。」って、はっきりと言っておきます。
仕事で、何組もやっていると、「早く決めればいいのに。」とか「どっちでもいいじゃん」って思ってしまいがちですが、お客様に取っては大事なことだから、原点に戻るようにしています。お客さんと同じくらいの温度でいるのは難しいですが、冷めていても良くありません。
いつもハイテンションのお客様を相手にしていて疲れませんか?
お客様は、確かにハイテンションです。生涯最大のイベントだし、結婚は幸せなことですから。どっちかと言うと、新婦さんのほうがテンションが高いと思います。正直、疲れるというのはあります。でもマリッジブルーよりは、ハイテンションのほうがいいですよ。
ふとした瞬間に「ほんとにこの人でいいのかな?」とか思ったりするのかな。いきなり喧嘩が始まったりします。私のお客さんではないですが、打ち合わせの時に新郎と新婦が喧嘩を始めて、新婦がテーブルをバンッて叩いて、泣きながらその場を出ていってしまったことがありました。
私もびっくりして、「何が起こったんだろう?」と思いました。あとで聞いてみると、色々と不安があったらしく、担当者にも不満があったみたいです。最終的にはちゃんと式をやりましたけれど。
式に出て感動しますか?
しますよ。新婦からお父さんへの手紙とか聞いていると、やはり「じーん。」ときます。仕事なので、感情移入しすぎるのもあまり良くないんですけど、現場のスタッフも入りたての頃は感動して泣いたりしていますよ。
仕事で心がけていることは?
うちはホテル内の式場なので、チャペルの作りとか披露宴会場の豪華さといったハード面では、専門の式場には負けてしまいます。その分、ソフト面では負けないようにしようと心がけています。お客様が他の式場と比べても、「プランナーの菊池さんが良かったので決めました。」って言ってもらえるようにしないと。
それにはやはり接客が重要です。成約率で伸び悩んでいた時、何が足りないんだろうと思って、やはり細かいところからやっていかなくてはと、新規で接客した後には「昨日はありがとうございました。」と必ず手紙を書いたり、資料をお送りする時は、プロの筆耕さんに一枚一枚墨で宛名を書いてもらったりするようにしています。
お客様がどう思っているのかをいち早く察するのも大切です。初対面の時は、お客様もあまり話してくれないんですが、色々ご質問をしながら自分からお話を振っていくと、だんだん心を開いてくれます。たとえば子供がいる方には「なんていうお名前ですか?」ってご質問すると、自然にお話してくれるので。
結婚する人に子どもがいる?
最近は、出産をしてから式を挙げる人も多いんですよ。「できちゃった婚」の方もいますし。急いでやりたいっていう人は、おなかが目立たないうちに式を挙げたいという人が多いんですよ。今度式を挙げる方も、おなかの中に赤ちゃんがいるんです。新郎のご両親が見学にいらして、「早く挙げたい。」って言うから、聞いてみるとやっぱりそうでした。
新郎はちょっとホスト風な感じのイケメンと言うか、衣装を合わせていても、「コレ、似合わなくネ?」とか思ったことを普通にはっきり言う、いまどきな感じの若い方で、打ち合わせは常に新郎新婦の両親が同伴して、6名対私でやっていました。いろんなカップルがいますよ。
最近印象に残った結婚式は?
最近では、新婦が体育大の卒業生で今も現役でチアリーダーをやっていて、当日は新婦が所属していたチームが来てチアリーディングを披露して、披露宴にいらしたお客様も「すごい!」って、かなり盛り上がりました。
ケーキ入刀を、「本物の刀でやりたい。」っていう人もいました。それでファーストバイトをしたいと。ファーストバイトっていうのは、ケーキ入刀した後に、新郎さんが新婦さんに最初の一口を食べさせる儀式です。「一生、食には苦労させない。」みたいな意味があるようです。「刀でやりたい。」とおっしゃられた時は、さすがにびっくりしました。
車が大好きな新郎さんの時は、ケーキに車が乗っていました。ケーキ入刀もナイフじゃなくて大きな車のキイで入刀するんです。受付には、風船で作った大きな車があって、ウェルカムボードは免許証仕立てで、新郎新婦のツーショットの写真が入っていました。
グレイが大好きな新郎新婦は、お色直し後のキャンドルサービスで、新郎がグレイの「ソウルラブ」を熱唱しながら、「ドアを開けて」っていう歌詞のところで、新婦さんがドアを開けて入ってきて、新郎さんと一緒にハモり、またグレイの曲が流れる。そんな演出をするのに、演奏とか照明とか何度もリハーサルして、ちょっとしたライブでした。
すごいですね。自分だったらどんな式を挙げたい?
色々見ていると、「自分だったら...」ってすごく思いますね。私はできれば、お招きできる人は全員ご招待して、盛大にあげたいですね。でも自分がメインというより、両親とか、おじいちゃんおばあちゃんに感謝の気持ちを伝えたいです。お世話になった人たちに恩返しできるような演出をしたり、サプライズで何かをしてあげたい。
その予定は?
えっ、ないですよ。でもいちばんのしあわせは、やっぱり花嫁さんになることかな。親にも「人の幸せばっかり見てないで、早く自分も幸せになりなさい。」って言われます(笑)。
これからの夢は?
もっとウェディングの専門知識を養って、将来はウェディングプランナーを育成したりできるようになりたいと思います。そのためにはもっと勉強しないと。もし結婚したとしても、自分のフィールドを持ってそこで活躍できればいいなと思っています。
スポーツをやっていて良かったことはありますか?
ニチジョで学んだことはすごく大きいですよ。ニチジョだからこそ培ったものもあります。私は極真空手をやっていたので、礼儀とか精神面で審判や先輩に見習うところが多く、そういうところも良かったと思います。
結果的にスポーツと全く違う仕事に就いたのですが、体力や忍耐力、精神力などは、他の人よりはあるんじゃないかなと思います。失敗した時は落ち込みますけれど、そこから踏ん張れるし。スポーツをやっていて不利だと思ったことは一度もないですね。
人と人の間でする仕事だから、挨拶も大事なコミュニケーションのひとつです。スポーツをやっているときちんと挨拶ができる、そこも強いと思います。
シュウカツはどんな感じでした?
体育大に入ったからには体育の教師になりたいとか、スポーツ選手とか、実業団とか、みんなもたぶんあこがれると思うんですけど、私も最初は競技を続けたい気持ちがあって、一般企業なんてって思っていました。でも、それを変えてくれたのが就職講座でした。
就職講座がなかったら、たぶん就職していなかったと思いますね。あれはインパクトがあって、そこで知り合った同期にすごく影響されました。みんなで自己PRとかを必死に考えて、「自分も考えないと。」となって、いい意味でうまくのめり込まされました。
そういうことが自分を変えましたね。世の中スポーツだけじゃないんだというのがわかりました。一般企業のことを知って、企業を体験してから体育教師になる道もあると思い、取りあえずいろんな業界を見ようと思って企業見学をしました。そこでたまたま引っかかったのが、ホテルでした。
ニチジョ生にアドバイスを
体育大から一般企業に入っても、決して損をすることはないと思うんですよ。最初はすごく大変でしたけど、今思えばそれも勉強だったと思います。一般企業だからこそ身に付いた部分もあります。最初はわからないことがあっても、体育大の子は飲み込みが早いから、すぐに伸びると思います。
体育大卒って言うと、「へえ、すごいね。」って言う人もいれば、「頭が筋肉。」って思う人もいます。でも体育大だから悪いと思う人は少ないと思うんです。明るくて元気でフレンドリーなら、どこに行っても好かれると思いますよ。
学生のうちに遊ぶことも大事ですけど、たまには自分と向き合って考える時間を持つのも必要かなと思います。部活をやっている子は、目標に向かって頑張ることに忙しいと思うんですけど、たまには競技だけじゃなく、自分を見つめ直す機会を持ってほしいですね。
あと、友達をたくさん作ったほうがいいと思います。大学時代の仲間は、自分の財産になると思うんですよ。同世代だけじゃなくて、大学生のうちにいろんな人と話して触れ合うのがいいと思います。