資格・就職
- 営業系
- 製薬メーカー・営業企画
髙橋 千華(2010年度・健康スポーツ学専攻卒)
■製薬メーカー勤務
ニチジョ生としての強みをMRに活かして
大学2年生での腰の骨折を機に、教職志望から一転して、一般企業への就職を決意した高橋さん。就職活動中にMR(医薬情報担当者/製薬メーカーの営業職として医薬品の情報を医療関係者に伝える)の仕事に出会いました。神奈川県と千葉県でのMRとしての勤務を経て、現在は本社で営業企画の仕事をしています。
<2018.03収録>
どうしてニチジョに入学したのですか?
中学校で陸上をやっていた時の体育の先生に憧れて、私も体育の先生になりたいと思って入学しました。でも、大学2年生の時にアルバイト先のレストランで事故に遭い、腰の骨を折ってしまったんです。ベッドで寝たきりの日々になり、自分と向き合っていろいろなことを考えました。当時は教員免許の10年更新制が始まる頃だったこともあり、本当に教員を目指したいのかを、自分自身で振り返ってみたんです。そうしたら、教育実習まではイメージできても、10年後に自分が教壇に立っているイメージはできませんでした。体育の先生なのに、ケガをしたことで実技に支障があるかもしれないという懸念もありました。それで一般企業を見てみようと切り替えたのです。だから周りのニチジョ生に比べて、一般企業を目指したのは早かったですね。
就職活動はいつから始めましたか?
私の学生時代は就職活動の始まりが早かったので、3年生の夏休みには就職イベントに行きました。MRを目指したのは、就職情報サイトでMRの特集記事を読んだのがきっかけです。体育とは真逆のイメージでしたが、「健康」というキーワードは共通していると気づきました。また、所属していたのがスポーツ医学ゼミだったので、先生にMRを考えていることを相談してみたら、「高橋さんは明るいから、病院を訪問したら先生(医師)のことを元気にできるんじゃない」と言われて、MRを目指す気持ちが強くなりました。就職イベントでは製薬メーカーだけではなくて医療機器メーカーや食品系も見たのですが、心が動いたのは製薬メーカーばかり。自分はMRになりたいのだと確信して、エントリーはMR一本に絞りました。
MRという仕事のどんなところに惹かれたのですか?
人の役に立てることです。加えて、医師のサポートをすることで患者さんを救うことができるところがかっこいいと思いました。テレビの医療ドラマもすごく好きだったので、医師と話すことを仕事にできるというのも惹かれた理由の一つです。
キャリアセンターの面談には45回も通ったとか。
それだけMRになりたかったんです!OGがいる業界ではないので、自分の努力で切り開かなければならないと思っていました。自己分析の段階から相談に通って、エントリーシートも添削してもらいましたし、面接の後には、その日に聞かれた質問と回答を話して、どう答えたら良かったかを振り返っていました。教員志望のニチジョ生も動き出す前の時期でしたが、説明会で他大学の友達ができたり、キャリアセンターに行けばキャリアカウンセラーに話を聞いてもらえたので、就職活動が孤独だと感じることはありませんでした。
面接では、話すことを文章で暗記すると忘れた時に困ってしまうので、キーワードにして覚えていました。一対一の面接は得意でしたが、グループディスカッションではなかなか手を挙げられませんでした。今思えば、ニチジョ生であることには体育大学生という個性があったのですが、当時は有名大学の学生に囲まれると怖かったんですよね。当時、入社した会社の最初の選考は、説明会の後にテーマを与えられて、10分後に1分間スピーチをするというものでした。そこでは、目を見て話せるか、相手に嫌な印象がないかなど、人としての姿勢を見られていたのではないかと思います。私は普段から大学でも挨拶をしていましたし、元気で恥ずかしがらないところが良かったのかもしれません。その後の選考は一対一の面接でした。
今の会社を選んだ決め手は?
ひとつは、自信を持って医師に提案できる薬があるということ。MRは営業として、医師がMRからの情報提供をもとに患者さんに薬を処方し、それを使用した患者さんに健康な生活を送ってもらうことが大切だからです。もう一つは、会社の方々の雰囲気が良かったからです。OGがいないこともあり、会社の雰囲気がわからなかったのですが、社員の方や内定者と話すイベントが多くありました。その時に話した方々が、みなさん前向きでイキイキとしていて、すごく素敵な人達だったんです。「この人達と仕事をしたい、この環境なら頑張れる」と思いました。「私がなりたいのはこういう社会人だ」というイメージを持てたことが良かったですね。
最終面接の時に印象的な出来事がありました。最後に「何か質問はある?」と聞かれ、「私は体育大学だからみんなと違って少し心配です。私でもやっていけますか?」と聞いたんです。そうしたら、当時支店長だった方が、知識と情熱の話をしてくれました。「今、知識があって情熱があまりない人と、知識はないけれど情熱がすごくある人、どちらが伸びると思う? 情熱がすごくあるなら、知識はいくらでも後から伸ばせるから、情熱がある人が欲しいんだよ」と言われたんです。私はガッツを持って努力を続けてきたタイプだから情熱はある。それなら知識はいくらでも増やせるのだと分かり、「この会社に入りたい!」と思いました。鳥肌が立ちましたね。
ニチジョのゼミでは、どんな研究をしましたか?
東京大学医学部附属病院に来ている循環器の患者さんの呼吸機能を測り、タバコを吸っている人が運動した時にどうなるかを調べました。純粋に「医学を知っていたらかっこいい」という気持ちで選んだテーマでしたが、将来につながったのは良かったです。スポーツ医学のゼミを選んだ理由は、「スポーツをやっている人には小児喘息だった人が多い」という話を授業で聞いたから。私自身も、幼稚園の頃に喘息だったので、興味を持ちました。偶然にも、GSKは呼吸器領域のリーディングカンパニーなので、今の仕事を通して、そういう人を一人でも救えるのかなと思っています。
入社前にMRの魅力だと思った「人の役に立てる」「医師のサポートをして患者さんを救える」というのは、就職して実際に感じられましたか?
「患者さんの病気が良くなったよ」と言ってもらえる機会があった際には、そのように感じました。MRは、直接患者さんには会えませんが、医師にいろいろなデータをお持ちして、患者さんがもっとよくなるようにという共通のゴールを持ってお話しています。お話する回数を重ねるうちに、少しずつ医師と信頼関係ができてくるのです。
入社されてから今までの流れを教えてください。
まずは入社して3カ月間、ホテルに缶詰めになって研修をしました。そこで薬学や人の身体の構造、薬についている添付文書の読み方まで学びます。薬学部を卒業された同期もいましたが、スタートは一緒なのが魅力的でした。その後に私は神奈川支店に配属となり、MRとはどういうものかを先輩方に教わりました。約2年半で転勤し、次は千葉支店に配属されました。
千葉では、約80名の医師を担当して、1日10名位に会っていましたね。そこで出会った医師の一人にはとても成長させてもらいました。その地域の中心的な役割を担っている医師で、担当するのはプレッシャーもありましたが、持ち前の根性とガッツで向き合いました。少しずつお話してもらえるようになり、面会時間が3分から10分、30分と伸びていったのです。その医師からしたら息子や娘くらいの年齢なのに対等に接してくださり、信頼を築くことができたのではと思います。この医師に成長させてもらったことで、自分の仕事のスタイルを習得できましたし、社会人としての自信もつきました。
それから本社の営業企画に配属されたのですね。
本社勤務は2年目です。営業企画は営業部門の中の1つの部署で、MRの評価制度作り、営業内の人事配置、社宅や車両手配のサポートなど、さまざまな業務をしています。私が今、メインに担当しているのは表彰関係です。パフォーマンスをあげた社員たちを表彰する仕組みを作り、表彰を行うというもの。その中でも一番大きな表彰は、1年間の活動成果を営業所長がプレゼンテーションし、審査が行われるものです。受賞すると、報奨としてチームでの国内研修旅行が与えられます。表彰式は、華美ではないけれど「来年はここに来たい!」と思ってもらうために演出を工夫し、表彰式に来られない現場社員にはライブ中継をしています。営業所のチームみんなで取り組める機会であり、この表彰が「今日もう一人先生に会おう」「先生(医師)が納得してくれる情報提供をしよう!」というモチベーションにつながるかもしれません。
今まで、私の顧客は病院の医師や薬剤師などで、その人に薬を処方してもらったり、正しく使用してもらうための仕事をしていましたが、今は営業企画から発信して、約1,500人程度のMRとその他の営業組織に関わる社員を動かさなければいけません。視野を広く、視座は高くしないと伝わらないと思いました。たった1本のメールでも多くの人に届くことを踏まえて送る必要があるのです。企画する立場としては、すごく受け手を意識するようにしていますね。
今後はどんなキャリアを考えていますか?
本社に来て、世界が変わったと思っています。最初は「何で私が来たんだろう」と思っていましたが、全国の営業所にいる優秀な社員と関わる機会があり、学ぶことがたくさんありますし、「こうなりたい」と思える社員に出会えます。MRの経験を経て本社に来たことで、物事を大きく捉えることができるようになり、人を動かすことの大変さもわかったので、将来的には部下を持ち、熱意を伝えて周りを動かせる人になりたいです。GSKの会議はトップダウンではなくて、マネージャーが「なぜこれをやらなければいけないか」というWhyの部分を話して、Howをみんなで議論するスタイルです。そのWhyの説明がきちんとできる人になりたいと思っています。
ちなみに「ワーク・ライフ・バランス」の「ライフ」の部分はどうですか?
土日はしっかり休めますし、平日も19時くらいには帰宅していることも多いので、自分の時間を持てていると思います。また、同期が全国にいるので、出張に行った時に会ったり、プライベートで遊びに行ったりもしていますね。全国に離れていても結束力があるので、現地集合・現地解散で会うこともあります。その他の休みの日には、旅行に行ったり、美味しいものを食べに行ったりしていますよ。
最後に、ニチジョの後輩にメッセージをお願いします。
ニチジョの環境で育った4年間で、ニチジョ生はたくさん強みを身につけていると思います。明るさやひとつのことに努力する姿勢、向上心を持っているのです。それを強みとして自信を持ってほしいです。あと、世の中には自分の知らない世界があるので、自分で勝手に閉ざさないで、いろいろなところに出ていってほしいと思います。ニチジョ生が描く将来は偏りがちなのですが、世の中には自分のやりたいことを活かせる業界であったり、思いを伝えられる会社があると思うので、閉ざさないで挑戦してください。そのためのベースはみなさんが持っていると思います。
会社や組織が求めているのは、チャレンジするガッツのある人、一歩踏み込める人だと思います。頭で考えるよりも、一度やってみて、そこから改善点を探して修正しようという人。MRの仕事で医師と話すときにも、「今日はこの話をして、納得してもらえなければ、この話に変えよう」と、内容に修正をかけていくのです。何かをやりながら改善をしていくのは、部活の練習を通して経験しているはず。そのチャレンジができるのは、体育会系ならではの強みだと思います。