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佐藤 美幸(2007年度・健康スポーツ学専攻卒)
■医療機器メーカー
やばい、私ちょっと興味持てないかも…。
佐藤さんは、医療機器メーカーの営業をしています。仕事を始めて、その難しさ、厳しさを痛感した1年半。ずっとこの仕事を続けていけるか、ちょっぴり悩むこともあるようです。
<2009.09収録>
働きだして1年半。どうですか?
営業で毎日すごく歩いているので、だいぶん代謝がいい感じになって、おかげでちょっと痩せました(笑)。社会に出て、学生の時に自分が描いていたものと現実は違うということがよくわかりました。
どんな会社ですか?
医療機器メーカーです。社員は全部で1500人ほどです。私は、東京本社の営業チームにいます。営業チームは、主に循環器系の部門、透析系の部門、あと私がいる医療用品の部門に分かれていて、他に工場などもあります。もともと広島の会社で本社は東京と広島にあり、社風は全体にのんびりしているというかアットホームな雰囲気です。社員はやはり広島県人が多く、私も研修で時々広島に行ったりしています。
私が扱っている商品は主に病院で使われる消耗品で、たとえば注射器や、点滴に使う輸液のセット、経口栄養に使うチューブなどです。
どんな風に営業しているのですか?
病院に行き、新規開拓をして注文を取ってきます。病院内で使用するものを、「これ、どうですか?」という感じで提案していきます。営業範囲はおもに新宿、渋谷、世田谷区です。ニチジョの近くに行くこともありますよ。でも、回らなくちゃいけないところがたくさんあるので、なかなか寄れませんけれど。
普段はひとりで病院を廻っていますが、ここは絶対仕事を取らなきゃいけないっていうところには、上司がついてくれて一緒に営業します。大手のメーカーだとネームバリューだけでいけたりするのですが、うちの会社はあまり名前が通っていないので、どういう会社か知ってもらうところから始めなくてはいけない時もあります。
最初にやってみた時はどうでした?
初めて先輩に同行して営業に行った時、「やばい。私、ちょっと興味持てないかも...。」と思ってしまいました。病院の営業というのは、私が思っていた営業と全然違いました。
営業だから、私はもっとフランクというかお客様と気軽にお話ができるのかなと思っていました。実際に始めてみたら想像以上に難しい言葉や専門用語がいっぱい出てきて、頭の中がまっ白になりました。私の思っていた営業スタイルとは全然違うことを実感しました。
病院の先生や看護士に専門的なことを言われると、もう訳がわからなくなるし、誰と話していてもとにかく話についていけないんですよ。扱う製品の種類もたくさんあって、ひとつひとつ用途や使用法などを覚えていかなくてはいけません。難しい業界だっていうのは私も感づいていたんですけど、そこまでとは思っていませんでした。
かなり専門的な知識が必要なんですね?
はい。やっぱり、知識がある人はすごく売っているんですよ。先生や看護士さんにも信頼されて、「あの人なら安心。」みたいなのがあったりして。
このままじゃいけないと思い、家に帰ってきてからも自分で一生懸命勉強しました。で、やっとわかったと思っても、次の日に行ったらまたわからないことだらけ。最初はずっとその繰り返しでした。最近は、それもちょっと落ち着いてわかることが増えてきて、製品に関する一般的なことは答えられるようになってきたので、ひとまず「はあ。」っていう感じです。
営業先の相手はどんな人?
病院の先生や看護士さん、技師さんなどですが、その中でも消耗品購入の決定権を持っている人が重要なので、そういう人を探してアプローチしていきます。看護婦長さんにずっとお話していてもうまくいかないのに、違う人にお話してみたらトントン拍子に話が進んだということもあります。
その辺の人間関係はもう気配で探します。そういう営業の「ツボ」みたいのを見つけるのが最近は楽しいかなと思っています。ほんとになんか、空気読む感がすごくあるんです。会社にいても、病院でも、空気を読むことはすごく大事だと思いました。
まだまだ試行錯誤しながらという感じですが、最近はだいぶん慣れてきて人間関係とかもうまく作れるようになってきました。病院にはやさしい方もいらっしゃいますし、理不尽な要求をされる方もいます。いろんな人に会えて、名前を覚えてもらって、それで結果が出たりするとやっぱり嬉しい。
ニチジョ卒で良かったことはある?
病院を廻っているといろいろ聞かれるので、体育大卒っていうのは全面的にアピールしていますよ。「何やっていたの?」って興味を持たれて話が盛り上がってくれるから、体育会系というのはけっこう強みになります。
私はそれが普通だと思っていたのですが、いろんな人に「元気がいいね。」って言われます。逆におしとやかではないってことなんでしょうけど(笑)。そういう覇気があると、やっぱりかわいがってもらえます。上司に怒られても、切れたりしないで素直にあやまれるところも、体育会系のいいところだと思います。
あと、体育大卒だと酒が飲めるっていうイメージがあって、それもまあ強みなんですが、時々失敗したりします。入社したてのとき、課の飲み会で日本酒一気みたいな感じでがんがん飲んでいてつぶれてしまい、「お前はもう帰れ。」ってタクシーに詰め込まれて1人で帰されたり。酔っぱらって階段から落ちそうになったり...。
女性の営業ということについては?
女性というだけで名前を覚えてくれたりするからいいですね。すごい知識を持っている先輩が行って全然うまくいかないところを、私が「はいはい。」って言ってるだけで、話がどんどん進んでいくこともあったりして、女性っていうことは意外に武器なのかなって思います。ちゃんと勉強していって商品の説明がうまくできると、「意外と知ってるんだ。」って思われたりするし。
ただ、業界的には男社会です。社員もやっぱり理系の男性が多いですね。デメリットは、若いというのもあると思うんですけど、やはりちょっとなめられるというか、「女性だからどうせわからないだろう。」って思われたりします。
仕事で失敗したことはありますか?
ある時、商品に不具合があってあぶないことがありました。病院にあやまりに行って、(当然ですが)怒られました。やっぱり人の命に関わることだから、自分も適当なことを言えないと、責任の重さを痛感しました。商品のまちがった使い方をもし私が伝えて、患者さんになにかのことがあったら、やっぱり責任は私にあるので。
景気はどうですか?
医療系は世間の景気にあまり左右されないので、景気が悪くてもあまり影響はうけないんですけど、病院のほうの経営がいきづまっちゃったりすることはあります。そうなると病院は節約しなくてはいけないので、消耗品も減ってきます。ただ基本的に病院はものを使う仕事なので、そういう意味では景気にあまり左右されない業界で良かったと思います。
普段の生活はどんな感じ?
勤務時間は9時~6時です。でも営業なので、残業はあります。残業代はつけなきゃいけないんですけど、そこは中々つけられないですね。会社の周辺には食べるところがあまりないので、ご飯はだいたい自炊かな。帰りが遅くなった時には、コンビニに寄ることもありますが、日曜などに作りだめしています。
大学時代のことを教えてください。
健康スポーツ学専攻でした。部活はやっていませんでしたが、高校時代はバレーボールをやっていました。大学の頃は、吉祥寺のGAPでアルバイトをしていました。そのアルバイトはすごく楽しかった。でも仕事はけっこう厳しくて、アルバイトだけでデニムをどれくらい売ったかを競いあうイベントがあったり、ちゃんと商品を売らないとやっていけない雰囲気もありました。
だから、自分でもどうやったら服が売れるのか一生懸命考えていました。来てくれるお客さんにも満足して帰ってもらいたいので、素材のことを自分なりに調べたり、雑誌ではやっている服を研究したり、他の洋服屋さんに行ってどんな営業をするのか見たりしていました。やっぱりファッションに興味があったので、仕事に前向きになれたのだと思います。
シュウカツの時、どんな企業に行こうと思いました?
3年になって、将来自分は何をやりたいのか真剣に考えるようになりました。最初はアパレル系に行こうと思いました。GAPにはアルバイトを対象にした新卒採用枠がありました。アパレルの仕事は好きだからいいなと思ったんですけど、最初は販売員からなのとお給料の面で悩みました。
姉や友達に相談したら、「ずっと仕事をしようと思ったら別の業界のほうがいいよ。アパレルに行ったらもうアパレル以外はできなくなる。」って言われました。今にして思えば、そんなことはないと思うんですけど...。色々考えて結局踏み切れず、ひとまず他にもシュウカツしてみて、それでもやっぱりアパレルがやりたいと思えば、そのときは行ってもいいかと思い、他の業界も見てみることにしました。
営業全般で探していって、当時はいいと言われていた車業界(今はちょっとアレですけど)などを受けました。でも最終的には医療系に落ち着き、今の会社の面接を受けました。卒論の研究テーマが腎臓だったこともあり、会社の方にも興味を持ってもらえて、いろいろ教えていただき尊敬できる仕事かなと思いここに決めました。
医療系というのは、研究室の影響もありました?
あったと思います。シュウカツと卒論の時期が重なっていて、シュウカツにかまけてついつい卒論をおろそかにしていた時がありました。研究室の先生に呼び出されてお叱りを受けました。私もちょうどシュウカツで苦しい時期だったので、思わず大泣きをしてしまいました。先生に「泣きたいのは私のほうです。」って言われ我に返りました。
夏休みが終わった頃から研究を必死にやって、卒論をなんとか仕上げることができました。研究したことが今の仕事で役立っているかと言えば直接はないんですけど、でもあの卒論では「あの時はほんとにやったなあ。」という「やり遂げた感」があります。だから苦しい時は、「自分、あのときだって頑張れたじゃない。」って思うことにしています。
シュウカツに向けて何かやっていましたか?
大学時代は就職ゼミを受けていて、自己PRの練習をしました。最初は苦手だったんですけど、慣れてくればなんとかできるようになりました。自己PRをやったおかげで、面接でも話せるようになりました。
その自己PRは、面接で実際に使ったこともありますが、使わなかったこともあります。今の会社では使いませんでした。その会社の面接の雰囲気もあるので、空気を読むじゃないですけど、いつも「私はッ!」っていう調子じゃなくて、「ここは違うかな?」って思ったら自己PRをベースにしてちょっと押さえつつやってみるとか、その時々で変えていました。
今の会社で良かったと思いますか?
うーん...。ちょっと失敗したかなって思うところはあります。医療系で難しいっていうのもそうですし、「本当に興味があるの?」って聞かれたら自信を持てません。でも最近は前向きにやろうと思っています。自分でも勉強しだして、仕事が楽しくなってきたので、これはこれで正解かなと思っています。
将来的には?
将来的には、もう1度アパレルをやりたい思いはあります。正直に言うと、大学の頃の自分ってけっこう好きだけど、今の自分はそれほど好きって思えないんです。
大学の頃の自分は、アルバイトであんなに頑張れていました、そんな自分とくらべて、今の自分は何なんだろうと思ってしまうところがあります。最初の営業で「興味もてない、どうしよう」ってなった時ほどではないですが、今でもアパレルほどは仕事に興味が持ててはいないんです。
でも、今の会社は上司もかわいがってくれるし、別に評価されたいとかそういうことではなく、かわいがってもらっている分、期待に応えたいという思いもあります。だから、もうしばらく頑張ってみようと思います。
夢は未定?
模索中です。ずっとウダウダ悩んでいるのかな。踏ん切りがつかないのはやっぱり、会社の人にすごく恵まれているから。あとタイミングと言うか、自分の中でまだ何もやっていないっていう意識もあるんですよね。
大学時代の友達にあったりする?
たまに、会います。同じ研究室だった子とか、同じ専攻だった子とか。会社をやめちゃった子もいます。やっぱりスポーツで食べていける人って少ないようですね。
ニチジョ生にアドバイスはありますか?
3年生は、シュウカツこれからだと思うんですけど、色々見てほしいっていうのと、自分に嘘をつかず正直なシュウカツをしてもらいたいと思います。
正直なシュウカツというのは?
就職系の雑誌とか、情報がいろいろあるじゃないですか。たとえば私たちの時代は、自動車系がいいって言われていました。そんな感じで、すごく情報があると思うんですけど、でも実際、自分がほんとにそれをやりたいのかをよく考えて欲しいと思います。
情報に踊らされて、せっかく頑張っていいところに就職したとしても、実際入ってみて「ちょっと違うかもしれない」ってなったら悲しいじゃないですか。
たくさん見て情報収集するのはいいと思うんですけど、やっぱりその中で、「自分がほんとうにやりたいことなのか?興味のあることなのか?」っていうのを良く見極めてほしい。人に言われて流されるんじゃなくて、「みんなはこう言ってるけど、でもわたしはそっちの方が興味がある。」って思うのなら、自分に正直な気持ちでそっちのほうに行ってほしいと思います。