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キャリア支援 卒業後の教員採用試験対策「OGが語る卒業後の3年間」
教員の夢をあきらめない
教員採用試験選考に現役で合格できなくても、あきらめずに試験を受け続け、合格しているOGはたくさんいます。今日はその中の一人として、東京都の中学校で保健体育の教員として働いているIさんをお招きしました。Iさんは学生時代に受けた教員採用試験選考では不合格となりましたが、翌年再挑戦して、見事合格することができました。卒業してからどんなことをして、どんなことを思いながら合格に結びつけたのか、また、合格後に教員としての歩みをどう進めているのかについて、4年生に向けて語っていただきました。
【Iさんの話】
学生時代の教員採用試験選考には、自分なりに相当の準備をして臨みました。試験当日の手ごたえも無くはなかったので、不合格という結果はショックでした。しかし、「立ち止まっても何も始まらない。動こう!」と落胆を跳ね返し、私学の教員募集を探して6校くらいに応募しました。2月の中旬に、その中の1校で保健体育の非常勤講師として採用が決まり、卒業後はその学校で週15コマの授業を受け持ちました。非常勤講師は学校経営には関わらないので、授業が終われば解放されます。ただ私は、部活の顧問もやっていたので、かなり忙しく過ごしていました。
学校の仕事は、授業の空き時間に終わらせるようにするなど工夫をして、通学時間や帰宅後、休みの日などを使って試験勉強をしていました。問題集をひたすら解いて今まで勉強したことを覚えているか確認したり、実習校でお世話になった先生の指導をいただいてひとつ完璧な小論文を作ったりもしました。
そして2回目の試験に臨みました。小論文では、友達と予想していたテーマが当たり、自分が既に作った論文にもうまく結びつけることができました。勉強のかいもあって1次は無事合格できました。8月の半ばに合格発表があって、ちょうど部活の夏合宿の真最中だったのですが、その日の夜から2次試験対策を始めました。面接では、私立の試験で面接慣れしていたこともあって落ち着いていました。指導計画や生徒との関わりに関することは、私学での教員経験が活きて、どんな質問にも実体験を交えてすらすらと答えられました。しかし、正直にいうと、学生時代に受けた1回目の試験で感じたほどの手ごたえはなかったのです。こんなものなのかな、結果はどうなるだろうか、と。そして秋になって届いた結果は、合格でした。
私の場合、私立での教員経験が大いに役にたちました。また、4年生のときに知り合った、私と同じように卒業後の合格を目指すニチジョの友達と、卒業後もお互いに励まし合えたり教え合えたりしたことも大きかったと思います。その友達も、この年に無事合格することができました。
大学卒業後2年目からは、念願だった新採用として公立中学校で働き始めました。非常勤講師時代とは異なって担任を持つようになり、学級運営や保護者対応、生活指導など仕事は様々に広がりました。体育科の先生方との連携や、学校行事への取り組み、また、担任をする学年の活動もあります。
今、職場にはとても恵まれていると感じています。職員室の風通しは良好です。教師として、私はこれまでに大小いくつもの壁にぶつかりました。様々な仕事が重なって時間的に追い詰められたこともあったし、専門外である競技の部活動を、顧問として持つ苦労もありました。 その度に周囲の支えを受けながら、壁を乗り越えてきました。
ここで、今年度私が味わった「3回の涙」について、みなさんにお話ししたいと思います・・・。
~ このあと、Iさんの話は教師として奮闘する日常へと展開していきました。
学生達は、教師として一歩先を歩んでいるIさんの体験談に聴き入っていました。~
既卒で教員になる人が7割
Iさんの他にも、色んな道を辿って教員になる先輩がいます。公立の臨時的任用教員や講師、私立の常勤・非常勤講師、学校支援員、特別支援学校の介護職員などの学校関係の職業に就いたり、一般企業の社員やアルバイトなどをしたり、進学したりなど、様々です。卒業後、どの道を辿ろうとも、その時々に、懸命に取り組む人生経験のすべてが、目指す「教師力」の向上に繋ります。
キャリアセンターで把握している情報だけでも、卒業後に教員採用試験に合格する人は毎年50~70人に上ります。絶対に教員になろうという強い意志であきらめずに挑戦すれば、採用試験選考に合格できるということです。調査結果でも、全国の公立中学・高等学校教員採用試験選考の合格者の約7割が、既卒者なのです。
翌年の絶対合格を目指すなら、卒業後試験までの3カ月間働かずに、試験対策に専念するのも選択肢のひとつでしょう。新卒として、学生時代に行う就活の権利は一度きりです。どの職に就くか、就かないのか、メリットとデメリットをよく考えて自分なりのキャリアプランを立てることが大切です。
臨時採用教員について
その中で、Iさんが選択した臨時採用の教員の道は、正規教員になるためのステップとして非常に有効です。臨時採用の教員とは、正規採用教員が病気や産休で長期間学校を離れる場合や退職などにより欠員が生じた場合などに、その補充として期限付きで採用される教員のことです。大きく分けて、臨時的任用教員(常勤講師)と、非常勤講師の2種類があります。
臨時的任用教員(常勤講師)は、1年から3年程度で契約期間が決まっていて、正規教員に準ずる業務を行います。多くは月給制で長期休暇中も報酬があり、ボーナスなどが支給される場合もあります。生徒指導や学校行事にも携わることが通常で、公立の場合は、教員の年齢構成の標準化などによる採用調整や、公務員定数削減計画などによって近年増加傾向にあります。
非常勤講師は、契約した授業のみを担当します。試験勉強に割く時間的なゆとりがある一方、多くの場合ボーナスや長期休暇中の報酬はなく、授業1コマ単位で報酬が支払われるので経済的にはやや不安定です。継続雇用ではないので、長期的な取り組みへの参画や、学校生活全体を通して生徒と100パーセント関わることもできません。
いずれにしても、教育の現場に身を置くことは、教師としての資質を実践的に高めていけるので、次回の採用試験で大きな強みとなるでしょう。多くの自治体では、経験者に対しての特別選考の措置もあります。もちろん仕事と受験勉強の両立には相応の覚悟が必要です。臨時採用であっても、教師として、生徒のために全力で頑張ることが必要なのは言うまでもありません。
Iさんが、夢に向かって道を切り開き、現在、学校現場で教師として活躍している様子を聴いて、学生達は多いに力づけられました。Iさんの体験談を参考に、各自のキャリアプランに関する具体的なイメージを膨らませることもできました。4年生はあと数ヶ月で大学卒業という人生の節目を迎えますが、教員採用試験の合格まで、そして教職に就いた先も引き続き、一生涯に渡ってそれぞれのキャリアを積み重ねていくことになります。