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女性のスポーツ業界でのキャリア形成

片山 晴子さん

東京ヴェルディ株式会社 ファンデベロップメント部 ファンクラブグループ

鷹野 祐菜さん

一般社団法人東京ヴェルディクラブ 営業推進部 広報・プロモーショングループ

原田 梨紗さん

東京ヴェルディ株式会社 パートナー営業部 リレーショングループ

向 倫子さん

東京ヴェルディ株式会社 広報部


日本女子体育大学は2020年2月に、女子サッカー・なでしこリーグに所属する「日テレ・東京ヴェルディベレーザ」とコーポレートパートナー契約を締結しました。今回のキャリア・カフェはその一環として、同クラブの運営をはじめ多くのスポーツビジネスを手がける東京ヴェルディ株式会社の女性社員4名をお招きし、「女性のスポーツ業界でのキャリア形成」についてお話を伺いました。当日はコロナ禍のためオンラインで開催し、50名以上の学生が視聴。司会進行は、健康スポーツ学科の芳地泰幸准教授が務めました。
<2020.11収録>

【芳地先生】
本日は、まず東京ヴェルディ株式会社の企業概要や具体的な業務についてお聞きした後、4名の方々からスポーツ業界に入った経緯や現在のお仕事内容、やりがいなどをお聞きしていきます。

日本のサッカー界をけん引し、数々のタイトルを獲得

【原田さん】
東京ヴェルディ株式会社の原田です。まずは本日の到達目標を3つご紹介します。

■サッカークラブで働くことのイメージができる
私たち4名の業務内容や働き方を聞いて、サッカークラブやスポーツクラブでの仕事を少しでもイメージできるようになってほしいと思います。

スポーツ業界では女性が活躍できないというイメージを払拭できる
「男性ばかりが活躍しているのではないか」「家庭と仕事の両立ができるか不安」といったイメージがあるかもしれませんが、女性でも十分に活躍できるイメージを持っていただきたいと思います。

自分自身が築きたいキャリアを受講前よりもイメージできる
みなさんはサッカークラブに限らず、スポーツに関わる多様な仕事に興味があり、目標も様々だと思います。4名の実体験は、それが絶対に正しいわけでも、そうあるべきだというわけでもありませんが、一例として参考にしていただければと思います。では、弊社の説明に移ります。

東京ヴェルディ株式会社では、女子サッカーの「日テレ・東京ヴェルディベレーザ」と、男子サッカーの「東京ヴェルディ」という2つのサッカークラブを運営しています。

◆日テレ・東京ヴェルディベレーザ(以下、ベレーザ)
ベレーザは、1981年に日本初の女子サッカークラブ「読売サッカークラブ女子・ベレーザ」として誕生し、2021年で創設40年となるアマチュア女子サッカークラブです。創設以来、パイオニアとして日本の女子サッカー界をけん引し、数々のタイトルを獲得してきました。2015年シーズンから2019年シーズンまでのなでしこリーグ5連覇を含め、優勝回数は歴代最多を誇ります。
また、2019年に開催された女子サッカーのワールドカップでは10名の選手が日本代表に選出されるなど、何人もの日本代表選手を輩出してきました。現在の日本代表監督である高倉監督や、2011年のワールドカップ優勝時に活躍した澤穂希選手、日本女子体育大学の卒業生でもある岩清水梓選手もベレーザ出身です。
そして2021年の秋には、女子のプロサッカーリーグとして「WEリーグ」が新設され、ベレーザも参入が決まっています。今後は女子プロサッカーチームとしてのクラブ運営がスタートし、「WEリーグ」の初代女王を目指して活動していきます。

◆東京ヴェルディ(以下、ヴェルディ)
続いては男子のプロサッカークラブであるヴェルディです。1969年に「読売サッカークラブ」として創設され、ナビスコカップ初代王者やJリーグ初代年間王者に輝くなど、こちらもパイオニアとして日本のサッカー界をけん引し、数々のタイトルを獲得してきました。ただ、チーム創設から半世紀におよぶ歴史の中では挫折も経験し、2005年にはJ2に降格しました。2019年には創設50年を迎え、新たに「世界で輝く人材を育成する」というミッションと、「世界一のクラブに」というビジョンを掲げて活動しています。
また、サッカーで培ってきた育成力を様々な競技にも展開しています。2019年には一般社団法人東京ヴェルディクラブを立ち上げ、サッカーだけではない14競技で活躍できる人材の育成を目指す総合型スポーツクラブを運営しています。子どもたちが様々なスポーツに触れて自分の可能性を最大限に生かすことが出来るようなクラブにしたいですし、スポーツの領域に留まらず、音楽や芸術などの業界へも積極的に進出していく方針です。

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20代30代が力を合わせ最前線で活躍

ここからは弊社の具体的な仕事内容を紹介します。

職種はフロントスタッフと現場スタッフで大きく2つに分かれて、本日紹介するのは、[ファンデベロップメント部][営業部][試合運営部][広報部][普及部][経営企画部]の6部署で構成されるフロントスタッフです。

まず、[ファンデベロップメント部]のターゲットは一般顧客であり、サポーター向けの取り組みを部内の4グループで進めています。

【チケットグループ】
サポーター向けのホームゲームのチケット販売や、販売促進に向けた企画チケットの販売を行うほか、法人向けチケットも企画します。

【グッズグループ】
グッズの企画から制作、販売、売上管理まで一貫して行います。時には選手の意見も聞いて企画を行い、制作会社との交渉や進捗管理をも行います。

【ファンクラブグループ】
ファンクラブ会員の満足度向上につながるキャンペーンの企画や、新規会員の獲得に向けた企画などを考えます。

【ホームタウングループ】
ベレーザとヴェルディの知名度や強みを生かしたイベントを企画し、地域活性化に寄与することがミッションです。

以上が「ファンデベロップメント部」の業務内容です。ここから先は、[ファンデベロップメント部]以外のフロントスタッフの紹介です。

[営業部]
ベレーザとヴェルディの新たなスポンサーを獲得する「新規スポンサー営業」のほか、選手を起用したプロモーション企画の提案、企業に協賛していただく"冠マッチ"の企画運営など「スポンサーアクティベーション」と呼ばれる業務も行っています。

[試合運営部]
ホームゲームの競技運営や、スタジアムの演出などを担い、様々な関係企業との調整業務を行います。スタジアムでのより過ごしやすい空間づくりに向けて、サポーターの意見を聞く機会もあります。

[広報部]
ベレーザとヴェルディに関わる情報発信と情報管理をミッションとして、日々の取材対応やプレスリリースの配信、SNSの更新などを担当します。

[普及部]
地域におけるスポーツ普及活動のほか、スクールの運営やスクール生の獲得がミッションです。サッカーに限らず、障がい者スポーツを含む様々なスポーツの普及を推進しています。

[経営企画部]
人事や経理、総務などバックオフィス業務を行います。

社員数は2020年11月時点で男性23名と女性17名で合計40名。平均年齢は35歳です。社員の中には、前職の経験やノウハウを業務に生かしている社員がいます。スポーツ小売業で培った、お客様とのコミュニケーション能力をファンクラブ運営での業務に生かしたり、グッズの制作会社での経験をグッズ事業に生かしている社員、ホームタウングループで不動産業界での営業経験を生かす社員もいます。また、スポーツイベントの企画運営企業からの転職で試合運営部に入った社員や、金融機関で培った正確性をバックオフィス業務で生かす社員などもいますし、新卒で入社して活躍している社員もいます。
業務の最前線で活躍する社員は20代30代が中心で、みんな仲が良く、和気あいあいとした雰囲気です。横のつながりも強く、多くのプロジェクトで複数の部署が協力し合います。また、2021年に開幕する「WEリーグ」では、「運営にあたる法人を構成する役職員の50%以上を女性とする。」という数値目標が示されているため、さらに女性の採用を拡大させて、女性が活躍できる会社にしていきたいと考えています。

【芳地先生】
転職での入社が多いことはスポーツ業界の特徴ですね。まずは簡単な自己紹介と、なぜ東京ヴェルディ株式会社を選んだのかについてお聞きしたいと思います。

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伝統あるクラブの新たな歴史づくりにチャレンジ

【鷹野さん】
私は大学新卒で入社し、現在は一般社団法人東京ヴェルディクラブに出向して広報業務を担当しています。サッカー業界で働くことは中学生の頃からの目標でした。大学では女子サッカー部に所属し、監督からはクラブの現場を実際に見ておくべきだとアドバイスを受けました。就職活動では3つのJリーグクラブのインターンシップを経験し、弊社への入社につながりました。

【原田さん】
私は大学を卒業し、営業職として人材系企業に2年間勤務した後、伝統あるベレーザやヴェルディでの新たな歴史づくりにチャレンジしたいと思い、大きな期待感を持って入社しました。弊社でも営業部に所属しています。

【片山さん】
私はサッカー解説者をマネジメントする会社からの転職です。前職で日常的にJリーグに関わる中でサッカークラブの業務に興味を持ち、入社しました。現在はファンクラブグループに所属しています。

【向さん】
私は大学卒業後、まずはテレビ局に入社しました。その後、別のJクラブで営業部・普及部・広報部を経験し、現在はヴェルディの現場付き広報を担当しています。前職では、組織が巨大化するにつれてクラブの運営方法も変わり、自分らしさを発揮する働き方が難しくなっていった印象がありました。弊社では常に新しいことに挑戦し、若手や女性社員も活躍できそうな点に魅力を感じて入社を決めました。

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【芳地先生】
学生時代の過ごし方など、どのような経験が現在につながっているのでしょうか。

【鷹野さん】
中学生の頃はトレーナーとしてサッカー業界で活躍したいと考えましたが、思い描く将来像が変わる可能性もあると考え、商業高校に入学しました。情報処理や簿記などの資格を取得すれば、幅広い就職先に生かせると思ったからです。実際、高校時代の女子サッカー部の顧問の先生がJリーグでの選手経験もある方で、狭き門のトレーナーよりもフロントスタッフを目指すべきだとアドバイスをもらい志望が変わりました。大学の女子サッカー部では、1年次は選手で、2年次以降はマネージャーと主務をしましたが、そこで選手や監督のサポート、チームの広報活動などに取り組んだ経験が現在につながっています。

【原田さん】
私は大学生のときに、視覚障がい者が行うブラインドサッカーを統括する、日本ブラインドサッカー協会でのインターンシップに参加しました。試合運営やSNSでの情報発信など幅広い業務に携わる中で、選手のために行動し、スタッフ一丸となって大会を成功させる仕事に魅力を感じ、スポーツ業界を志望するようになりました。大学時代の就職活動では、スポーツ業界で生かせる自分の強みを自己分析したり、スポーツ業界の職種を調べたりしました。しかし、当時は「スポーツ業界で何がしたいのか。」「どのような関わり方がしたいのか。」を明確にすることができず、それならば焦る必要はないと思い、業界を絞らずに幅広くエントリーしました。ただ、社会人になってからもスポーツ業界への思いは消えず、スポーツビジネスの勉強会や交流会などに参加していました。

【片山さん】
私は中学時代バスケットボール部に所属していましたが、そこまでスポーツに打ち込んでいたわけではありません。ただ、高校卒業後に2年間アメリカに留学した際、日常にスポーツが溶け込んでいるスポーツ大国の魅力を感じ、スポーツは見るだけでも十分に楽しいと実感しました。その後はヨーロッパに滞在していた時期もあり、そのときには日本とは比べものにならないほどのサッカー熱を感じましたし、ロンドンオリンピックを観戦することもできて、スポーツに関わる仕事がしたいと思うようになりました。

【向さん】
私は大学生になるまでスポーツと縁のない生活を送っていましたし、通っていた大学がJリーグのチームのスポンサーだと知って興味を持つまでは、スポーツ業界のこともサッカーのことも何も知りませんでした。そんな中、前職の当時の広報の方から「自分の強みを見つけることが大切」とアドバイスを受け、在学中はスポーツビジネスの勉強に励みました。ただ、当時はあくまでもマスコミ業界への思いが強かったので、そのために何をすべきかしっかりと計画を立て、目標までの道筋を立てて就職活動に臨みました。

【芳地先生】
では次に、現在の具体的な業務内容や仕事でのやりがい、大変だと感じることについてお聞かせください。

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社会は女性の意見を求めている

【向さん】
プレスリリースの作成と配信、公式SNSの更新などのほか、現場付きの広報として、チームの活動に合わせて練習やアウェイでの対戦などにも帯同し、取材対応や写真撮影、動画撮影なども行います。サポーターと関わる機会は少ないですが、SNSでサポーターの反応をチェックして成果を感じることもあります。個人的には仕事はある程度大変な方がいいと思っていて、広報としてより多くの人にチームの魅力を伝えるためには新しいことに挑戦するなど、あえて大変な道を進むべきだと思っています。決められた仕事をこなすだけならそこまで大変ではないですが、それでは新たな一歩を踏み出せないからです。

【片山さん】
私はファンクラブの新規会員への対応や、ファンクラブ限定のイベントやアプリの企画・運営を担当しています。試合会場でファンと交流し、勝敗による喜びや悔しさを共有できることが、この仕事の醍醐味です。大変なのはシーズン前ですね。いまは軽減されていますが、以前は1人で数千人分の会員管理を担当し、会員へのお知らせや会員限定グッズなどを発送する手配業務に追われたときは大変でした。

【原田さん】
私は営業職として、既存顧客であるスポンサー企業向けに、選手を起用したプロモーション活動や"冠マッチ"などを企画・提案しています。自分が企画したプロジェクトで「売上が上がった」「成果があった」と感謝していただけるとやりがいを感じます。企業への訪問のほか、情報収集や企画の考案・資料作成など、社内業務もあるため多忙ですが、それでもつらいと思ったことはありません。ただ、「スポンサー企業のためにもっとできたことがあったのではないか」と悔しさを感じるときはあり、その思いをバネに業務に励んでいます。

【鷹野さん】
私が広報業務を担当する東京ヴェルディクラブには、サッカー以外の14競技が所属しているので、それぞれの活動内容を把握するために頻繁にチームの方々とやり取りをしたり、現場へと足を運ぶほか、SNSやWEBサイトの運用から東京ヴェルディクリエイティブセンターとの物事の調整まで、業務は多岐にわたります。東京ヴェルディには多くの競技があり、様々な声が届く中で、広報活動の成果としてこちらの思いが届いていると感じられることがうれしいですね。かつてSNSやWEBサイトを運用するための知識が足りていなかったときは大変さも感じましたが、業務を通じてスキルアップができました。

【芳地先生】
スポーツ業界で役立っていると感じる資格、家庭との両立などについてはいかがでしょうか。

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【鷹野さん】
私は商業高校の頃から簿記や電卓計算、ビジネス文書、情報処理やプログラミングなど、ビジネス系の資格を取得してきました。その中でも持っていて損はないと思うのは、簿記と秘書検定です。どこの部署でもお金を扱う際に簿記の知識が役立ちますし、秘書検定は基本的なビジネスマナーや、会社での立ち居振る舞いなどが身につきます。

【向さん】
私は大学で中学高校の英語教員免許を取得しました。語学は、現場での選手とのコミュニケーションはもちろん、様々なシーンで役立つので、時間があるときに勉強しておくといいと思います。また、かつては仕事と家庭の両立は難しいイメージがありましたが、弊社には結婚や出産を経て、家事・育児をしながら時短勤務で活躍している女性がいるので、イメージが変わりましたね。

【片山さん】
そうですね。制度面でも企業風土でも差別はありませんし、女性だからマイナスだと感じたこともありません。むしろ女性の視点で意見を求められる場面が多いので、「女性だから」と遠慮することなく積極的に手を挙げ、声を上げようとする意識を持つことで活躍の場も広がると思います。また、結婚自体はそこまで影響はありませんが、妊娠・出産は最低でも何か月間は影響があります。そこで大切なのは、仕事を続けていくためにパートナーと話し合うことです。できれば結婚前に、出産後や転勤になった場合などの方向性を話しておくべきだと思います。あとは職場の理解。どうしても子どもの発熱で仕事を休まざるをえないケースもあるからです。その点では、今は職場のみなさんにも協力していただき、時短勤務でストレスなく両立できています。

【原田さん】
片山さんのように活躍し続けていけることはわかっているので、ネガティブな印象はありません。他のスポーツクラブでは女性が社長として活躍しているケースもあるので、ロールモデルとなるような女性リーダーにもっと発信してもらうことで、業界全体に女性の活躍の場が広がっていってほしいですね。

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【芳地先生】
では最後に学生へのアドバイスをお願いします。

自分の「好き」や「興味」に素直に向き合ってほしい

【鷹野さん】
社会人になってつくづく思うのは、学生時代は時間的な余裕があるということ。みなさんには資格取得やビジネス講座への参加など、自分を高めるチャレンジをしてほしいと思います。

【原田さん】
自分がワクワクできることや、少しでもやってみたいと思えたことに果敢にチャレンジしてほしいですね。また、人とのつながりを大切にして、誰かに何かを求められたらすぐに行動を起こせるようなフットワークを身につけてほしいと思います。

【向さん】
自分がしたい仕事をピンポイントで見つけることは難しいかもしれません。そんな時は、少しでも興味を持ったらすべてにチャレンジし、もっとやってみたいと思えることを見つけていくのがいいと思います。

【片山さん】
もし迷いが生じたら自分が好きなことを考えれば自ずと道は決まると思いますので、自分の心に素直になって、やりたいことに向けて努力を重ねてほしいです。たとえ遠回りになったとしても、スポーツに関連する業界ならつながりがありますから、チャンスをつかむ可能性は広がると思います。

【芳地先生】
学生はこれから就職活動をしてファーストキャリアを選んでいくわけですが、単に企業名や職種などにとらわれることなく、長期的な視野で自分の人生をデザインしていくことが大切なのだと思います。東京ヴェルディ株式会社のみなさん、本日はどうもありがとうございました。

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