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スポーツ行政の仕事とこれからの地域スポーツ

小野寺 大地さん

スポーツ庁 参事官(地域振興担当)付専門職


今回お招きしたのは、スポーツ庁の参事官(地域振興担当)付として地域振興を担当されている小野寺大地さんです。スポーツ庁の仕事内容や国家公務員の仕事内容、部活動の地域移行についてのお話のほか、小野寺さんのキャリアと人生哲学のようなお話までお聞きしました。当日は約20名の学生が参加し、健康スポーツ学科の芳地泰幸准教授が司会進行を務めました。
<2023.10収録>

地域課題をスポーツの力を活用して解決に導く

みなさんこんにちは、小野寺大地です。私の出身は宮城県の気仙沼市で、気仙沼高校から順天堂大学のスポーツ健康科学部スポーツマネジメント学科に進みました。私が学部生のときに大学院生だったのが芳地先生で、卒業論文の指導などでは大変お世話になりました。卒業後は学校法人順天堂に就職し、最初は病院での医療事務に従事しました。その後は、さまざまな経緯があり現在はスポーツ庁に勤務しています。その経緯も後ほどご紹介します。

まずはスポーツ庁の業務内容をご紹介します。スポーツ庁は文化庁とともに文部科学省の中に設置されており、日本スポーツ協会や日本スポーツ振興センターなど、外部機関とも連携しながら業務を進めています。スポーツ庁全体の職員は約130人で、母体である文部科学省の職員は約30人程度。残りの約100人は他の省庁や大学、民間企業、地方自治体などからの出向者で構成されており、私もその1人です。出向の場合、平均的に2、3年の勤務です。現在のスポーツ庁長官は、2004年のアテネオリンピックで金メダルに輝いた室伏広治さんです。この民間出身の長官のもと、政策課、健康スポーツ課、地域スポーツ課、競技スポーツ課、そして、私のような参事官の担当分野として地域振興担当、民間スポーツ担当、国際担当の4課3参事官体制でスポーツ行政を担っています。

健康スポーツ課は国民の健康増進に関する業務を行い、地域スポーツ課は文字通り地域スポーツを管轄し、競技スポーツ課はオリンピックなどに関連する業務を担当します。参事官の地域振興担当は、スポーツを活用した街づくりを担当し、民間スポーツ担当はプロ野球やJリーグなどのプロスポーツを管轄し、市場規模の拡大策やアスリートのセカンドキャリアなどを考えています。国際担当はスポーツを活用した国際交流や、日本国内で国際大会が開催される際の調整などを行っています。

よく「スポーツ振興」といわれますが、"スポーツの振興"と、"スポーツによる振興"の2つの側面があり、私が所属する地域振興担当の役割は後者。少子高齢化対策や過疎化対策、健康増進対策、地域経済の活性化など、地域が抱える課題をスポーツの力を活用して解決に導くこと、すなわち「スポーツによるまちづくり」を推進しています。

例えば、日本では心筋梗塞など、心疾患の既往がある人はスポーツクラブに入会できず、家に引きこもって社会的に孤立してしまうケースがあります。社会的な孤立は、喫煙・肥満・運動不足よりも死亡リスクが高まる由々しき問題。そこでドイツのケルンでは、医師が患者さんに「週に3回はみんなとバレーボールをしてください」といった集団スポーツ運動療法を処方する取り組みが行われています。バレーボールコートには資格を持った医師が立ち合い、安全安心な環境でバレーボールを楽しみます。運動後にはドイツの名産品であるビールで乾杯するそうです。

こうしたスポーツによるまちづくりや地域振興を推進する組織は「地域スポーツコミッション」と呼ばれ、全国に約200団体あります。1団体あたりの職員数は5名程度と規模は小さいですが、日々アイデアを出し合いながら、社会的効果の大きい取り組みを進めています。

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多様化が進んでいる国家公務員の世界

次に、国家公務員の仕事内容をご紹介します。まずは、さまざまな現場の視察や意見交換などを行った上で、政策や各種事業の企画立案を行い、国会に提出する法案の作成や、事業を実行するための予算案を作成して財務省と折衝。予算が決まると公募をかけて委託契約を結び、民間事業者や大学、自治体等に補助金を交付するなどさまざまな形で事業を進めます。

また国会の会期中には、答弁の作成などの仕事もあります。

ちなみに、国家公務員は"お堅い"イメージもありますが、意外と多様性が進んでおり、くだけた雰囲気です。なかには長髪や茶髪の男性もいますし、ひげを蓄えている方もいます。服装も割と自由で夏はアロハシャツやかりゆし姿の方も多くいます。

部活動の地域移行や地域スポーツは今後どうなる⁉

ここからは、具体的なスポーツ行政についてです。まず、少子化によって運動系の部活動への参加人数が落ち込み、存続の危機に立たされている事例は少なくありません。しかし、地域には昭和の時代にはなかったようなクラブチームもあり、選択肢が多様化していることによる影響もあると私は思っています。スポーツ庁は、学校の部活動や地域スポーツのあり方として、地域連携に関する総合的なガイドラインを作成しており、地方自治体はこれに沿って地域の実情に即した部活動を実践していく必要性があります。子どもの数や総合型地域スポーツクラブ等の受け皿の有無等地域差があり、過疎地域もあれば、人口が増加している地域もあるなど、自治体によって状況が異なるからです。

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例えば、市区町村と競技団体、総合型地域スポーツクラブなどの事業者が連携して地域のクラブ活動を運営する方法や、それが難しければ部活動指導員を各校の部活動に送り込む方法、複数の学校の部活動が合同チームをつくり、そこに指導員を派遣する方法もあります。人口が減少、子どもの数が減少している一方でフィットネス市場は、市場規模、店舗数ともに拡大していますので、フィットネスクラブでヨガや体づくりを行うスタイルの部活があってもいいと考えています。地域だからこそ実現可能なこともあると思います。

また、日本では小学校のスポーツ少年団や中高の部活動等でそれぞれ"引退"が存在することが、大人になってスポーツを続けなくなる要因のひとつと私は推察しています。練習方法を工夫すれば中学生と大人が一緒に活動してもいいですし、クラブ活動の地域移行が進展すれば、こうした文化が根付いていく可能性もあるわけです。

対してドイツでは、極端な話、子どもは生まれた瞬間に親と同じ総合型地域スポーツクラブに入会し、大人になるまでずっと同じクラブで活動します。子どもたちは学校が終わると真っ先にクラブに向かい、運動を楽しむほか、施設内の学習用スペースで宿題をするそうです。そこの場では地域の大人が勉強を教える光景も見られるといいます。また、そのクラブのトップチームがプロリーグに所属しているという形なので、プロ選手が練習する横で、トップチームと同じユニフォームを着た小学生が練習することもあれば、趣味としてそのスポーツを楽しむ高齢者もいるわけです。ドイツは地域スポーツの先進国といわれており、日本にもこのような事例がどんどん出てきてほしいと切に願います。

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また、日米の違いにも目を向けると、日本の学校では、多くの教員は"半強制的"に部活動の顧問を務めますが、指導時間は残業代の支給対象になりません。一方、アメリカでは部活動の指導をするか否かは教員本人が決定し、指導を希望した教員には時給が発生します。この指導者へのサラリーの財源は家庭が負担します。さらに、日本ではたいてい希望した部活動に入部することができますが、アメリカでは登録できる部員数に上限があり、希望者が多ければセレクションが行われます。出場機会を確保するためです。不合格になった場合は入部を認められず他の競技に挑戦することになります。また、アメリカでは1年を3シーズンに分け、各シーズンで競技を変えることも可能です。日本にはない「マルチスポーツ」の文化がそこにはあります。

日本では、3年間で1度もベンチ入りできない高校球児が全国に10万人いるそうです。背番号をもらえない補欠でも、他の競技で活躍できればいいのですが、日本には同じ部活動を長く続けることを美徳とする風土がまだまだ根強いです。

東日本大震災での被災から縁が生まれ、キャリア形成の出発点に

ここからは、私自身が歩んできた道をお話します。高校時代は、地元の宮城県に本拠地を置くプロ野球・楽天イーグルスの球団職員になるのが夢でした。そのためには「スポーツマネジメント」を勉強しようと順天堂大学に入学。大学では、電通のスポーツ局出身の教員が指導してくれることがあり、「電通に入ったらキラキラとしたカッコいい仕事ができるかもしれない」という思いが芽生え、ふんわりと電通入りを夢見ながら大学1・2年次を過ごしました。

しかし、2年次の冬に東日本大震災が発生して、地元の気仙沼市も被災。一時は親からの連絡も途絶え、テレビで火の海と化した気仙沼の様子に呆然としました。地震発生から4日後に親と連絡がとれ帰郷すると、親が営んでいた会社の建物は鉄骨だけの状態。私は退学して家業を手伝おうと決め、大学にも退学の意思を伝えました。

そんな矢先、順天堂の理事長と親交が深い某企業の社長が奨学金を出してくださることになりました。このご縁をくださった理事長へのご恩に報いるべく、私は順天堂へ就職することを決めました。

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意外だった病院勤務、そして天野篤先生との出会い

就職後、最初の配属先は順天堂大学医学部附属順天堂医院。診療内容を点数化して保険者に請求する業務を経て、3年目には病床係となり、全1,020床のどこに患者さんを入院させるのかを調整するベッドコントロールという業務を担当しました。稼働率と診療報酬を左右する重要な業務です。当時の院長は、上皇陛下の執刀医である心臓血管外科医の天野篤先生でした。「現場のプロはキミだから。キミの意志決定の全責任は私が負うから自信を持ちなさい。」と入職数年の私をプロとして扱い、院長権限を委譲し自由度を与え一任してくださいました。天野先生との二人三脚の病院運営はとても厳しいものでしたが、結果を出せば必ず評価をしてくださるとても理想的な上司でした。院長をご退任して数年後の定年退職記念講演会の際には「あのときはしんどかったな。俺たちすごいがんばったよな。」と涙を流しながら私と握手をしてくださったのはいまでも大切な思い出の1ページです。私にとって病床係の期間は青春でした。

全力を出すからこそ本当の楽しさがわかってくる

社会人5年目には、大学も病院もすべての状況を把握している必要がある学校法人順天堂の総務局総務部総務課に異動しました。日々、上層部から依頼される様々なミッション、他部署からの依頼や部署間・部門間の調整役など、どんな仕事にも常に全力で応えていきました。仕事にも慣れ、自ら積極的に新しい業務を起案できるようになってきた頃に突然スポーツ庁への出向を命ぜられました。事務方の出向は前任者がいなかったのでイメージできませんでしたが、勝手が全くわからない病院時代の経験、文化も言葉も異なる法人への異動の経験が自信となっており不安はなく、言い渡されたその日は高鳴る心臓とワクワクした想いを落ち着かせる為にバーに寄って帰ったのを憶えています。そして、私は2022年4月にスポーツ庁に入省しました。

このようにこれまでの人生において、実は自らキャリアを選択したことがありません。流れに身を任せる。言うなれば受動的。能動的に選択したことといえば、順天堂大学に入学したことくらいでしょうか。そして、自らの人生を通して気付いたことがあります。人生がどうなるかなんて、誰にもわからないのです。私の大学入学時にはそもそもスポーツ庁はありませんでしたので、スポーツ庁に入省することなど全く考えていませんでした。キャリアは多様な要素、多くの偶然が複雑に絡み合いながら形成されていくものであり、未来はどうなるのかわかりません。そんな不確実な未来にキャリアがよりよいものにするために、私からみなさんにお伝えする"本日の最重要ポイント"は

「目の前のことをなんでも全力でやる」

ということの大切さです。誰が自分の人生のキーマンになるかはわかりません。ある日突然、キーマンが現れるかもしれません。キーマンの前でしか全力を出さない人、出せない人は、信頼できません。自分との仕事で手を抜かれるかもしれないからです。大事なことは、意図や目的が(自分のレベルが低いがゆえに)理解しかねるような仕事や納得ができない仕事に対しても「つまんね~」ではなく、全力で取り組むこと。全力を出すからこそそこに本当の楽しさが見えてくるのであり、それはスポーツも仕事も同じだと思います。

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人生をちょっと楽しくするための考え方

ここからは、私自身の経験に基づく考え方などをいくつか紹介していきます。

■人生を変えた祖父のひと言。「気持ちのいい人になりなさい」

祖父は私に多くを指導しませんでした。祖父のこのたった一言が「気持ちのいい人とは何だ?」と私に考えるきっかけをくれました。それ以来、元気よく挨拶する人、時間を守る人、約束を守る人等、「気持ちのいい」に当てはまりそうなことをひたすら実践してきました。

■幸せになれる人・なれない人の差。「あなたはいま幸せですか?」

幸福度の感じ方は人それぞれで異なり、現状を幸せだと感じている人は5年後も10年後も幸せであるという研究結果がでています。幸せになれる人となれない人の差は、今幸せを感じているかどうか。現状に感謝することが幸福感につながるのだと思います。

■誰かのことは自分ゴトとして考え、自分のことは他人ゴトとして考える

これは、人生がより楽しいと感じられるようになってきたときの私自身の感覚です。誰かのことは自分のことのように本気で考え、悩み、助け、行動に移します。自分のことは他人ゴトのようにいい意味で適当に考えています。自分を他人として見たときに自分というコンテンツが面白いかだけを考えて生きています。読んで字のごとく自分の人生を客の立場から観るようになると意志決定が軽くなり、悩まなくなります。

今日からできる7つのアクションプラン

次に紹介するのは、私がこれまで多くの方と仕事をしてきた中で、仕事ができる!すごい!と思う人に共通してみられる特徴に基づいた7つのアクションプランです。

◆いつでも即レスを心がけよう

社会に出て感じるのは、仕事ができる人はいつも即レスだということ。いつも即レスなら、仮に返信が遅くても「あの人は今バタバタしてるんだ」と相手も察してくれます(笑)。スピードを求められる仕事もあります。すぐに意見が欲しいときなどもありますので、大事な仕事を振るときは、絶対に即レスしてくれる人です。

◆返事は「はい!」か「イエス!」か「喜んで!」

今日のキャリアカフェは、先輩である芳地先生が考えに考え抜いて私に依頼してくれました(と信じています)。それに対してノーという選択肢なんてありません。頼まれごとは試されごとです。相手はできることしか頼んできません。すべて受けることに決めておいたほうが思考はシンプルです。イエスと言ったあとに、内心では「どうしよう」と思うこともあります。まずは受けてしまってから、達成までの道筋を考えたほうがクリエイティブですし、生産的です。断る理由やできない理由を考えるのはとても非生産的です。

◆誰かに薦められたものはすぐに試して感想を伝えよう

本でも映画でも音楽でも、相手は自分のことを考えて薦めてくれます。なるべく早く観るなり読むなり必ず試して相手に感想を伝えましょう。経験の共有は相手との距離をぐっと縮めます。

◆予習をしよう

誰かと会うときには、相手の会社や業界事情等について予習し、私が自分の立場で提供できる情報などお土産を必ず用意します。また相手に質問したいことなども事前に整理しておくと生産的な時間を過ごすことができ話題は尽きません。

◆きれいな日本語を使うようにしよう

体育会系のノリで「うっす」「あざっす」ではなく、きちんと「おはようございます」「こんにちは」。きれいな日本語を使える人は意外と少ないからこそ、きれいな日本語を使うだけで「おっ」と相手に思わせることができますし、他者との差別化を図ることができます。

◆お手紙を書きましょう

LINEやメールが当たり前の時代だからこそ手紙を書きましょう。手紙を書こうとすると、便箋選び、筆記具選びから相手のことを想像しながら悩みます。そして書く内容で悩みます。いざ書き始めたら間違えます。何度も書き直します。とても時間がかかるものです。しかしだからこそ相手の心を動かします。魂が宿ります。

◆困っている人がいたら助けよう

困った人を助ける。当たり前のことですが見て見ぬふりをしてしまう人がほとんどですよね。反射的に動けるように普段から癖付けておきましょう。ああ、自分はいいことをしたなあと感じることもなく自然体で助けられるようにしましょう。そうすると自分が困ったときに周りは絶対に助けてくれます。いつもみなさんの姿を見ている人たちが助けてくれます。

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学生のうちにやっておいたほうがいい7つのこと

部活動で忙しいとは思いますが、ここではぜひ学生時代に取り組んでほしいことを7つ紹介します。

[1]47都道府県を訪れる

社会人となって一緒に働く仲間や取引先のほとんどは日本人です。出身地の話になったときに、47都道府県に行っておけば、誰とでも話題に困ることはありません。ただし、ポイントは県庁所在地やメジャーな観光地ではない、第2都市に行くことです。例えば私の出身地である宮城県。「えー、宮城なんですね。私この前仙台行ってきたんですよ!」と言われても「へー、そうですか」で終わります(笑)。それが「この前白石市に行ってきたんです!」となると「えー、これまたなぜ?」と会話が生まれます。それを47都道府県全部カバーすれば、社会人としてかなり武器になります。営業職なら"最強"です。

[2]名作・名著を抑えておく

映画でも本でも、社会人になると時間がなく、最新作を追ってしまいがち。名前は聞いたことがあるけど観たことがない映画や何十年も読まれ続けている有名な本などはチェックしておくといいと思います。

[3]カラオケの練習をしておく

最近流行している曲だけではなく、10年前、20年前、30年前、40年前の人気曲を3曲ずつくらいストックしておくといいでしょう。社会に出ると、意外とカラオケに行く機会はあります。上司や取引先から振られたときに動けなくなる方と「待ってました」と言わんばかりに堂々と相手方の世代の曲を唄ってのける方とでは差が出ます。

[4]失敗をとにかくいっぱいする

失敗をした経験がないと、社会人になって失敗したときに戸惑って動けなくなってしまう人もいます。どうしたらいいかわからないんです。さらには失敗を恐れてチャレンジしなくなり小さく動くようになります。失敗を重ねれば重ねるほどリカバリー能力が身につきます。そこには多くの学びがあります。失敗を恐れず堂々と生きることができますし、チャレンジできるようになります。また自分がたくさん失敗をしていると他人の失敗も許せるようになります(笑)。

[5]恥をいっぱいかく

恥をかいたことがない人は結構いますが。恥は誰もかきたくないです。すると、恥をかかないようなチャレンジしかしなくなります。学生時代の恥や失敗は、社会人になってからのエピソードトークとしてネタになります。成功した話は絶対にウケません(笑)。いっぱい失敗していっぱい恥をかいて話のネタを増やしておきましょう(笑)。

[6]自分の行動を常に言語化・説明できるようにクセをつける

「なぜそうしたのか」と聞かれたら、「なんとなく」ではなく、頑張って言語化してみてください。感覚的に「なんとなく」で済ませてしまうと思考が止まります。必ず根拠があって動いているはずです。自分の行動を説明できるようになればどこでミスをしたのか分析できるようになり改善策が立てられます。

[7]仲間といること

仲間と話すことで気付くことができる自分の特徴もあります。学生時代ほど、仲間と同じ時間を自由に共有できるときはありませんので、仲間と過ごせるときはなるべく仲間と過ごし、いろいろな思い出を共有し、さまざまな事柄について議論を深めてください。

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キャリア選択のヒント

次は、これから仕事を選んでいくときに、考えておいた方がいいポイントです。

●夢を考えてみる

夢を聞かれると職業で答える人がほとんどだと思います。海辺に住んでみたい。都市部で生活したい。夢をふんわりとでもいいので、映像で思い浮かべてみてください。

●何をしているときが好きかを考えてみる

●何しているときの自分が好きかを考えてみる

この2つは似ていますが、異なります。特に大事なのは2つ目。自分が誇りを持って取り組めることは何かということです。これを考えることで、辛くて仕事としては続けられないことも見えてくると思います。

●自分が得意なことは何かを考えてみる

人と比べてではなく、あくまでも自分の能力の中で相対的に得意なものでかまいません。それをもう一度見つめ直してよく考えてみてください。

●お金について考えてみる

例えば、年収で3,000万円欲しい人と、500万円欲しい人では、キャリア選択は分かれると思います。もしくは、「200万円くらいで構わない。プライベートを大事にしたい。低賃金でも社会的意義のある仕事をしたい。」という人もいるでしょう。自分のお金に対する価値観についてきちんと考えてみると、目指すべき業界や仕事内容などがクリアになってくると思います。

行動を選択する際の判断基準

上で紹介したようなポイントで物事を考えていくと、自分の中で判断基準ができていきますが、判断基準がないと何かが起きたときに人は悩んでしまいがちです。そこで、私が行動を選択する際の判断基準をご紹介します。

✓ キャリアに連続性があるか

私は今後もストーリーとして筋道がとおるキャリアにしようと考えています。私が今から金融業界に進んだら少しチグハグな気がしますし、なぜそうしたのか説明がつきません。

✓ 自分の人生の最後に、自分の伝記をつくったら面白いかどうか

自分というコンテンツが面白いかどうか。ドラマティックであることも重要です。それくらい自分のことを他人事として捉えています。

✓ 誰でも経験できることなのか、今の自分だけしか経験できないことなのか

誰でも経験できることを経験しても話のネタにはなりません。差別化が図れません。

✓ また、それは後になって、飲み会で話せるネタなのかどうか

毎日帰宅して早く寝ても、そんなことは飲み会や打合せの冒頭、会議の空き時間の話のネタにはなりません。睡眠時間を削ってでも何かを経験し、インプットするようにしています。

✓ より多くの人を笑顔にできるのはどっちなのか

笑顔や感謝を見える形にしたのがお金だと思っています。より多くの人を笑顔にする方を常に選択しています。

✓ 今しかできないことなのか、いつでもできることなのか。

いつでもできることは全部後回し。今しかできないことだけを毎日優先して選択するようにしています。

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余談ですが、スタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授らが「計画的偶発性理論」というキャリアの考え方を提唱しています。人生では予期せぬ偶然の出来事がキャリアを左右します。震災等のアクシデントや人事異動、結婚や人との出会いなどの偶然の出来事が起きたときに、どういう行動や努力をするのかが重要で、偶然の出来事をプラスにするように行動し、努力できた人が、新たなキャリアにつなげられるとする理論です。そして、何かが起きることを待つのではなくて、意図的かつ能動的に行動した人にだけ、偶然を起点としたチャンスが増えるとしています。また、この計画的偶発性を起こす行動特性として5つが挙げられています。

1つ目は、常に新しいことに興味を持つ「好奇心」。2つ目は「持続性」失敗してもあきらめずに努力し続けることです。失敗しても成功するまで努力を続けていれば、いずれ成功します。失敗は成功のための糧にするという考えです。3つ目は「楽観性」、何事もポジティブに考えること。失敗を失敗だと思わずに、ポジティブに捉える大切さです。4つ目は「柔軟性」、こだわりすぎずに、柔軟な姿勢でいることです。こうあるべきだ、こうするべきだと頑固に生きたり、特定の考えに執着していると本当にいいもの、チャンスを見逃してしまいます。5つ目は「冒険心」、結果がわからなくても挑戦してみることです。

最後になりますが、ヒトはある日突然死んでしまいます。必ず死にます。東日本大震災を経験したからこそ私は強く思います。津波や地震だけではなく、交通事故や、心臓発作がいつ起きるか分かりません。死んだときに後悔しない唯一の方法は、いつ死んでもいいように毎日を全力で生きることです。私は今日死んでも後悔しません。みなさんもいつでも目の前のことに全力で取り組み、後悔しないように全力で生きてください。ご清聴ありがとうございました。

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【芳地先生】

小野寺さん、ありがとうございました。みなさんがイメージしていたスポーツ庁の"お偉いさん"とは違うイメージだったと思いますし、さまざまなことを感じられたと思います。ここからは質疑応答に入ります。

【健スポ1年生】

これから地域スポーツの仕事に就くとしたら、具体的にどんな職業がありますか。

【小野寺さん】

地域スポーツコミッションなどに所属して、自分が慣れ親しんできたスポーツを活用して地域課題を解決する仕事などもあります。現状では、地域スポーツの指導者としてだけで生活できている人は少ないと思います。ただ、スポーツ市場が盛り上がり、部活動が地域に移行していく中で、さまざまなパターンが出てきてほしいと思っています。新たな仕事をみなさんのような若い世代が自分たちで生み出していってほしいですし、これまでのさまざまな事例がありますので、今のうちに情報に接しておいてほしいですね。

最近私が見てきた事例で「大人のための」という需要は高まっているのではないかなと思います。大人になると人数集めや個々の時間調整が必要なため、意外とスポーツをする機会がなくなります。ですから、大人がスポーツをする場所をつくることもひとつです。宮城県では、地域スポーツコミッションがプロ野球チームと連携して父親向けのキャッチボール教室を開催しました。子どもとキャッチボールがしたいけどできないお父さんは少なくなく、大盛況だったようです。また、ラグビーワールドカップの機運醸成の文脈もあり福岡県で大人向けにラグビー教室を開いたところ、7割以上が女性だったとのことです。ずっとテレビで見ていて、楕円形の球を投げるのがどんなに大変なのかやってみたかったとアンケートに書いてあったそうです。フィットネスジムやパーソナルトレーニング以外にも需要はあるということです。

【芳地先生】

地域スポーツとはいろいろな関わり方があると思いますし、想像していなかった人材が地域スポーツの担い手になる可能性や、想像していなかった組織が部活動の受け皿になる可能性もあります。さまざまな想定を超えて、スポーツ界にイノベーションを起こすきっかけが地域移行には潜んでいると思います。ニチジョ生の皆さんも既にある企業や団体に就職するだけではなく、"ファーストペンギン"として自らの力でスポーツ市場を広げていくような発想を持ってくれると嬉しいです。さらに、スポーツ庁が2022年3月に発表した「第三期スポーツ基本計画」でも、スポーツ市場を拡大し、2025年には15兆円超のマーケットしようという目標が示されています。既存のマーケットの拡大だけではなく、新たなビジネスモデルの創出が求められますので、ぜひこの流れの中でみなさんがキャリアを磨いていってほしいと思います。

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また、小野寺さんから紹介のあった「計画的偶発性理論(Planned Happenstance Theory)」は、キャリア論の大家であるスタンフォード大学のクランボルツ教授が提唱した理論です。私たちのキャリアの8割は本人が予想し得ない偶発的な出来事の積み重ねによって決定されるというものです。たしかに私たちのキャリア(進路や将来、人生)は、自分で切り開いたかのようにみえても(思えても)、実際には人との出会いなど、多くの偶然の積み重ねによって形成されているといえます。しかし、ここで大切なことは、偶然が起きることを座して待っているだけではキャリアは広がらないという事です。チャンスをつかむためには予期せぬ出来事が起きた際に行動できるだけの準備をしたり、偶然の出来事に遭遇すべく積極的かつ柔軟に行動したりする必要があります。つまり、偶然を活かせるのは、さまざまなことに真摯に取り組んでいる人だけなのです。学生からは「でも」「だって」「だから」「どうせ」という"4つのD"をよく聞きますが、偶然と思われるような出会いを大切にしてほしいと思います。そして、その偶然を幸運へと結び付けていけるよう、日々を全力で過ごし、豊かなキャリアを描いてほしいと思います。

小野寺さん、本日はどうもありがとうございました。

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