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ゴルフを継続して見えてきたこと

石井 忍さん

ACE GOLF CLUB代表取締役社長 マスターインストラクター


本日のお客さまは石井忍さんです。石井さんは、日本大学のゴルフ部を経て1998年にプロ入り、1999年からツアーに参戦、2010年にプレイヤーからインストラクターに転身されました。プレイヤーとしての経験を生かし、テクニカルとメンタルを両立させたレッスンで、プロを中心に多くのプレイヤーをサポートしています。
<2015.06収録>

【司会】今回は対話形式でいきたいと思います。学生は一言ずつ自己紹介をどうぞ。

【A】スポーツ科学専攻1年のAです。バスケットボール部に入ってます。

【B】スポーツ科学専攻1年のBです。部活じゃないんですけど、公式ドッヂボールをやってます。ポジションは外野です。

【C】同じくCです。今は特に何もやっていないです。高校までは陸上をやっていました。

ここの大学の人は、スポーツをやりたいという人と、スポーツを生かした職業をしたいっていう人と両方いるんですね?

【司】あとダンサーもいます。幼稚園教諭や保育士を目指してる人もいるので、専攻によってわりと色が違いますね。石井さんはなぜゴルフを始められたのですか?

僕は小学校まではソフトボールをやっていました。バスケットボールも好きだったので、中学校に入ったら野球部かバスケ部に入りたいと思っていました。でも実家がゴルフショップをやっていて、父親に「どうしてもゴルフをやれ。」と言われて...。13歳でゴルフを始めた時は、本当に嫌で嫌で(笑)。

【司】中学校にはゴルフ部ないですよね?

学校から帰って来てひとりで練習していました。家にちょっとしたボールを打つ場所があって、そこでやったり、ゴルフ練習場に行ったり...。最初はあちこちボールが行ってたのが、練習するうちにまっすぐ飛ぶようになってきて。

でも自分がうまいのか下手なのか全くわからないので、果たしてどれくらいのポジションにいるのかちょっと確かめてみようと、関東のジュニアの試合に出たの。そうしたら予選にも通らないんです。自分ではうまくなったつもりでも、周りにはもっとうまい人がたくさんいました。

「やっぱりゴルフ部に入らないとダメだ。」ということで、高校はゴルフが強い東京学館浦安に行きました。ゴルフ部に入って、自分が全然ダメなのが分かりました。でも「高校で周りの奴よりうまくなれば、全国的にもうまくなるはずだ。」と、そんなモノサシはできました。

自分に一番近い勝てそうなやつをマークして、そいつには勝てるようになってきたのですが、全国優勝するようなやつらには全然勝てず、「まだまだだな。」と思いながらひたすらゴルフをやっていました。

Aさんは、いつからバスケット始めたの?

【A】小学校の5年から、ミニバスを始めました。

僕もバスケットは好きだったので、高校の頃はよくゴルフ部の練習を抜け出してバスケ部の練習に混ざってやっていたよ。今までバスケやってきて、将来どうなりたいって思ってた?

【A】高校まで部活を続けてきたけど、プロになりたいとかそういうのはなかった。大学に入ってバスケはしないつもりだったんですけど、審判の資格を取れるブロックがあったので、今は資格を取るために審判の勉強とバスケを並行してやっています。

審判っていうのは試験があるの?何かこういうの、トラベリングとか?

【A】そうです(笑)。

僕もそうだけど、ひとつのものを目指してきて、違う道に行く人っていっぱいいるよね。プロを目指してなれない人もいるし、なってもうまくいかなくて食えない人もいる。どこかで必ず分かれ道があって、その時に全然違うところに行くのか、すぐ横の道に行くのか、大なり小なり方向転換する時が来るんだよ。
Aさんはどうして今までバスケを続けてきたの?

【A】プロになるような実力はないので元々なろうとも思ってなかったし、ただ好きだから続けてきただけです。

僕もゴルフでプロになれるなんて思ってなかったよ。頑張ってプロにはなったけど、だんだんパフォーマンスが発揮できなくなってきて、色々脇道にそれたりして今に至るわけです。Bさんは、ドッヂボールはいつから?

【B】小学校2年生から続けています。去年は予選を通過して全国大会にもいったんですけど、私は高校3年生だったので受験で出れなくて...。今年も8月に全国大会の予選があるので、もう1回チャレンジして全国大会に行きたいです。

ボールが顔面に当たったりとかする?

【B】します。全国大会になるとやっぱり全然レベルが違います。

【司】顔面はノーカウントですよね?

【B】はい。でも同じ人が2回当たるとイエローカードになります。

危険球だから、顔は狙うなと?

【B】いや、その当たった人がイエローカードになっちゃうんですよ。

当てられたのに、ちょっと理不尽な感じするね?

【B】わざと当たりに行く人もいるので。

それは相当な根性の持ち主だね(笑)。

僕は高校のゴルフ部でなんとかレギュラーにはなれたけど、個人タイトルとかには縁がなくて相変わらず惰性でやっていました。そして大学を選ぶ時、仲間が「日大しかないだろ。」と...。

当時、日大は20年ぐらい連続で日本一になるような常勝校で、必ず勝たなくてはいけない、いや「勝たなくてはいけない」なんていうプレッシャーもなく、必ず勝ててた。もう3軍でも日本一になれるんじゃないかっていうぐらいでした。

僕が入った時は、ここのバスケ部ほどではないけど90人ぐらい部員がいて、そんな最強軍団に入って、高校で少しずつ築き上げたものが、またピューって1番下に落ちちゃったの。先輩も厳しくてね。ここは先輩は厳しい?

【A】厳しい人もいれば、厳しくない人もいます(笑)。

僕らの時は、4年が神様、3年が一般人、2年が奴隷、1年はもうゴミみたいな存在でした。だからますますゴルフが嫌になって、何のためにやっているのか分からなかったね。13歳からやり始めて、5年後、6年後、7年後と、どんどん嫌い度のグラフが上がっていきました(笑)。

【司】よくやめなかったですね。

なぜやめなかったか、何でだと思う?

【A】【B】【C】?

穴の開いた靴下、なかなか捨てられないってない(笑)? Tシャツとか、着ないのに捨てられない。「もしかしたら着るかも?」それと同じで、「もうやめりゃいいのに。」って思うんだけど、もう1人の自分がゴルフを捨てられなかった。だからダラダラと続けていたんです。

そんな中で、ひとつ大きなターニングポイントがあってね。自分よりうまい人たちが出ていなかった試合で優勝したんですよ。個人戦で「全日本パブリック選手権」って言うんだけど、優勝して胴上げもしてくれて、こうやってトロフィー持って写真も撮られて...。もう主役は僕1人ですよ。

その時、「あれ?これか?これのためにみんなやってるんだ。」と思ったんです。それまで、ゴルフつまんない、先輩は怖い、面白くない、いいことがひとつもなかったけど、勝った瞬間、自分の中のモチベーションがバァーっと上がりました。

大学でセレクションで入って来るような奴らは、100人中100人がプロになりたいと思っています。そんな中で「自分なんかプロになれるわけない。」って思っていました。でも優勝したことで、自分の中にも「いけるんじゃないか?」という思いが出てきたんです。

それまで何の為に練習するかわからなかったけれど、今度は勝つ為に練習するようになりました。目的地ができると、「そこに行く為にどうしたらいいのか?」っていうのも出てきます。それで前よりも効率よく練習できるようになって、ゴルフもぐんとうまくなりました。

その後レギュラーにも選ばれて、「日刊アマチュア」っていう試合でまた優勝することができました。その時はもう、「ゴルフ面白い!絶対プロになろう!」って思いました。

【司】プロになるためにどんなことをするんですか?

3次テストと呼ばれてるものがいわゆるプロテストなんですが、大学受験と一緒で1年に1回しかなくて、何千人の中から年間40人しか受からないという狭き門です。3次テストの前に2次テストがあって、その前に1次テストがあって、さらにその前にプレ予選っていうのもあります。

僕はパブリック選手権で優勝したので、2次テストから受けられたんですが、この権利は1回使うともうなくなります。

大学を卒業して、2次テストまでまだ半年以上あるので、大学の監督から「アメリカのゴルフスクールのスカラシップをやるから行って来い。」って言われて、西海岸のサンディエゴに半年間行かせてもらったんですよ。

行く前に色々調べると、西海岸だから滅多に雨も降らないらしく、アパートから出るともうすぐコースがあって、もう抜群の環境です。バスケでも、朝起きると隣に体育館があって、とても綺麗なコートがあったら、うまくなれそう?

【B】いや、コートがいいからと言って、必ずしもうまくはなれないと思います。

そうだよね。僕も行ってみて、確かに空気はからっとしているし、起きたらあったかいコーヒーが出てきてすぐに芝から打てるような最高の環境だったんだけど、どこか違和感がありました。スクールには、ゴルフがそんなにうまくもなく、5年もいるのに英語が全然できないような人もいました。

半年間そこで練習して、日本に戻ってプロテストを受けたら、せっかく飛び級で受けられたのに、落ちちゃいました。もう最悪です。その時、大学で仲が良かったヤツと久しぶりにゴルフをやりました。

大学の時は僕の方がずっとうまかったのに、何故か負けちゃった。その後もう1回やったらまた負けて...。「何でコイツ、こんなにうまくなってんだろう?」彼と一緒に千葉のゴルフ場に研修生として所属させてもらいました。

そこで練習場の球を拾ったり、お客さんのバッグを下ろしたり、色んな仕事をしながら、プロになるため練習をしました。そこでも一緒にやりあったら勝てないんです。もう悔しくて、悔しくて...。雨が降って部屋の中でボッとしていると、そいつが練習に行くのが窓から見えるんです。

「これはいかん。」と僕も急いでカッパを着て、雨の中練習に行って...。暗くなってきたので帰ろうと、そいつの部屋の窓をチラッと見たらまだ電気がついてなくて、「クッソ、まだ帰ってねえな。」と思って、こっちもクルマのライトをつけてパターの練習したり...。

変なモチベーションなんだけど、そいつにやっと勝てて「ヨシッ!」と思ってたら、そいつもまた猛練習してまた抜かれて、僕がまた抜いて、抜かれて、抜いてってやっていたら、いつの間にか2人ともすげーうまくなっていたの。

次のプロテストは1次からだけど、2人とも1次は余裕で通りました。あんなに苦労した2次もなんなく通りました。3次はちょっと緊張したけど何とか通って、晴れて2人ともプロになれました。

環境抜群のアメリカより、雨の中カッパ着て練習に行くようなところの方がうまくなれたんです。環境よりもライバルの存在の方が大きかった。やっぱり負けると悔しいじゃない。負けないように練習する。でまた抜かれて練習して、うまく上がっていけたんじゃないかな。

プロテストに合格して、今度は4次を受けました。そこからは毎年プロで受かった人たちも混ざってくるんですが、4次も通って5次も全然余裕で通っちゃった。6次は、プロのツアーの試合に出る権利を争うところです。そこで僕は10位に入り、翌年からのツアーにも出られることになりました。

それって、大学の試合で優勝するよりよっぽど価値のあることです。そこまでライバル1人のおかげで来れちゃったんだね。

【司】大学っていうのは、いいライバルに出会う可能性があるところでもありますね。その方は今、何をなさってるんですか?

今も第一線のプロで活躍しています。僕は途中で挫折しちゃったけど、彼は逆に上がっていって、プロのトーナメントでも2回優勝しています。井上信プロっていうんだけど、今でも仲良しです。もう、「負けたくない。」とは思わないかな(笑)。彼には頑張って欲しいと思います。

【司】アマチュアとプロって、やっぱりだいぶん違いますか?

交わるところはあるんですよ。アマチュアのうまい人はプロの下手な人よりはうまい。たまにアマチュアの人が、プロテストを受けてプロになったりするんですけど、そうするともう普通になっちゃうんです。プロのトップになると、本当にレベルが高くて全然違います。

【司】ゴルフって、ちゃんと食べられるプロがたくさんいるイメージがあるんですけど?

翌年の試合にシードで全部出れらる人は、今70人いるのかな? その70人がじゃあいくら稼いでいるのかと言ったら、1000万ちょっとでまぁまぁすごいっていう感じです。でも経費が年に600万も700万も掛かるので、それを考えたらそんなに儲かる仕事じゃありません。

シードを取るには勝ち続けなくてはいけないし、身体を使ってメンタルすり減らしてやってるわりには、稼いでる人はほんの一握りです。

みなさんは大学を出てなりたいものってありますか?

【C】体育の先生になりたいと思っています。中学校の体育教師か、小学校の先生かまだ迷っています。

そうか。ここで4年間勉強して先生になるんですね。

【司】そこが免許は取れるんですけど、なれるかどうかは厳しくて、少子化なので女子の体育の先生の募集が本当に少ないんですよ。

そうなんですか。何か良い手はないのかな?

【司】昔は希望者の8割ぐらいがなれたんですけど、今は一学年600人弱ぐらいのうち現役で教師になるのはヒト桁です。あとは非常勤講師みたいな形で何10人かなって、来年もまた受けるとかですね。

そんなに厳しいんだ。

【司】だから彼女たちもひとつのことをずーっとやってきても、どこかでキャリアチェンジを迫られるんです。

自分もゴルフという1本道を歩いてきて、ずっとプレイヤーでやってきたのに気がついたら教える方になって、メビウスの輪みたいにひっくり返っていました。

プロになって自分のゴルフが全然ダメで、もうズタボロになっていた時、ある人から「ちょっとゴルフを見て欲しい」と頼まれたんですよ。「自分が苦労してるのに、人に教える余裕なんてないよ。」と思いながらもアドバイスをしたら、その人すごい良くなって、プロテストも受かって、なんと翌年のトーナメントで優勝したんです。

なんか、自分ができなかったことを代わりにやってくれたと言うか、「面白いな。」と思いました。それが転身するひとつのきっかけでした。その人としゃぶしゃぶを食べていた時、気づいたら僕はアクをずっと取っていて、その時「たぶん僕って、肉食べる人じゃなくてアクをとる人なのかな?」って思ったんです(笑)。

思えば自分は選手だった時も、すごい気ぃ遣いで人の面倒をみるのが好きだった。だから、もともとサポート体質はあったんだと思います。プロ生活を15年もやってきて今さらですけど、自分の中のそういう才能にもっと早く気づいていれば良かったと思います。

【司】アスリートでやってきた人が目指すキャリアチェンジって、たぶんそういう感じだと思うんです。教員にならなくても、指導者になるとか、部活のコーチとか、思っている学生も多いので。それだけで食べられるかどうかは置いといて。

最初は「プレイヤーのオレが、どうして人に気を遣ってやらなきゃいけないんだ。」って嫌だったんですよ。でもいざコーチになってみたら、可能性が一気に広がって、雑誌とかインターネットやテレビでも取り上げられ、仕事も増えてきました。

同じ業界だからやってることはそんなに変わらないし、今は「変えるのは恥ずかしいことじゃないんだな。」って思います。ただ「プレイヤーをリタイヤした。」っていう気持ちはあるので、今も現役でやってる同世代のプレイヤーはリスペクトしています。

【司】ゴルフはプロアスリートとして長く続けられる競技のひとつですよね?

サッカーとかだと30ぐらいでもう終わっちゃいますよね。体操なんかだともう10代とかじゃないですか。新体操は20代?バスケのプロって何歳ぐらいまで出来るの?

【A】バスケもサッカーと同じぐらいですね。

男性と女性だと違うのかな?

【A】全然違うと思います。女性の方が早く引退しちゃうから、30まで続けてる人はいないと思います。

やっぱり女性だと結婚がターニングポイントなのかな?ゴルフで女子プロのプライムタイム(いい時期)っていうのは、20代前半から30歳前までって言われてるんですよ。でも結婚して子どもを産むと1年ぐらい休んじゃうじゃないですか。だから結婚したくても、スポンサーとかメーカーへの義理だとか色んなことがあって、20代をガッチリ拘束されちゃう人も多いんですよ。

【司】普通の仕事でもそうですよね。今は結婚して仕事を辞める人はそんなにいないですけど、子どもができると時短とか使いながら、マミートラックっていうんですか?ちょっとつまらない仕事になったり降格されたり、やる気があった人ほどそれでモチベーションを落として辞めちゃう人もいたり。
とは言っても旦那さんのお給料だけで食べていくのは今は難しいので、専業主婦にもなかなかなれない時代で、学生たちには「一生働くと思ってキャリアデザインをしたほうがいいよ。」って言っています。彼女たちの親世代が、お父さんのお給料だけでもやっていけるぎりぎりの世代なのかもしれないですね。

ゴルフの女子プロで、結婚して出産で産休明けから復帰してから強い人もいますよ。今ちょうど千葉でトーナメントをやっているんだけど、2日目終わってトップが、産休あけの人です。そういうのはゴルフならではなのかな?他のスポーツで出産して復帰する人は少ないんじゃないかな?

【司】今若いプロ選手のサポートなさっていて、いかがですか?

行きたい場所に案内してあげるのがコーチの役目なので、まず「どうなりたいですか?」って聞きます。美容院でもいきなり髪切られると「ちょっと待って!」ってなるでしょ。最初に話をしながらプランを決めて、レールにしっかり乗せてあげるのが僕の仕事だと思っています。

今はアメリカで自分を試したいと思っている人が多いですね。まずピンポイントで出られるメジャーの試合、全米オープンとかの権利を得られるように頑張ります。ちょうど先週、僕も一緒にサポートで行ってきました。今度は秋にあるアメリカの予選会に挑戦してきます。

アメリカは超ゴルフバブルで、全米オープンで優勝すると賞金は180万ドルです。日本で1年間戦って、賞金王でさえ年間1億5000万円ぐらいしかいかないのに、1試合で2億ってちょっと異常だよね。

【司】今、何をやりたいのかわからないっていう人もたくさんいると思います。優勝する前の大学生の頃の石井さんに、「何になりたいですか?」って聞いたらどう答えたと思いますか?

きっと「分かんない」って言うんじゃないですか(笑)?みんな、子どもの頃何になりたかった?

【A】ちっちゃい頃ですか?お花屋さんです。

【B】何を思って書いたのか分かんないんですけど、「電車になりたい。」って書きました。

トーマスとか、頭の中にあったんだろうね。でもそれは叶えられないね(笑)。僕も幼稚園の頃「蝶になりたい」って書いていました。きっと羽ばたきたかったんだろうね(笑)。

【C】何だったんだろう?覚えてないです。

憧れでもいいけど、陸上だと誰が好きだった?

【C】ボルトかな。短距離だったから。

ドッヂボールって、スター選手とかいるの?

【B】一緒に戦ったりする選手が身近にいます。男女混合でやるので、けっこう女子も多いんです。

自分の近くにすごい人がいるっていいね。そういう憧れがやっぱりモチベーションになるよね、バスケだったら誰?

【A】すごいなって思うのは田臥です。私もフォワードなので。

【司】可愛がってもらった憧れの先生みたいになりたいって人も多いですよね?部活の顧問の先生とか、自分も同じように指導したいみたいな。いいなと思うのが、帰省して、親以外のところで、恩師とか、部活でお世話になったコーチとかに挨拶に行く人が結構いるんですね。そういう斜めの関係の人がいるのは、スポーツをやっている人の特徴かもしれないですね。

1年生だと、これから色んな経験をして、やりたいことも変化していくと思うんだよね。僕の経験でも、「やりたいことがやるべきこと。」ってわかるのはまだまだ先だと思います。僕なんかプレイヤーから反対側に行ったのが36歳だからね。今は結論を出さなくてもいいから、「自分はこういうのが好き。」っていう本質を見つけるのがいいんじゃないかな?本質を忘れなければ、きっといい方向に行けると思うよ。

【司】目的地を見つけるにしても、周りから言われてもやっぱり素通りしちゃいますよね?自分でこれだと思わないと。

チャンスって色んなところにあるけど、ほとんどは素通りしちゃうと思うんですよ。気づかないから「チャンスを逃した感」もない。あまりひとつのことに固執しすぎてしまうと、タイミングを逃してしまうので、逃さないためにはやっぱりアンテナを伸ばしておいて、少しでも自分に引っかかるものを見つけることです。僕はタイミングを逃さなかったので、今はすごく充実しています。

例えば体育教師になれれば一番いいんだけど、人を助けたいとかサポートしたいっていう風に、少し視野を広げるだけで、自分の才能がまた別のところで開花する可能性もありますよね。例えば個人のアスリートをサポートするとか、2人3人をまとめてマネジメントするとか。そう思うと体育以外にもぐんと分野が広がらない?

「他に何か違うのないかな?」って別の物を探すよりは、自分のやってきたものからしっかりアンテナを張ったほうがいいと思いますよ。審判だってバスケットの本質から外れてないし、もしかしたら審判やりながら審判のやり方を教えるのもあるかもしれないし、バスケットを教えることもあるかもしれない。突然プロのサポートをするかもしれない。色んな可能性があると思うんです。

みんなはしゃぶしゃぶ食べる時どう?「誰かアク取ってよ。」って思う(笑)?僕は書き初めで、毎年「俺は脇役」って書きます。そうしないとすぐ調子に乗っちゃうんでね(笑)。

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