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マスコミ業界のなかだからこそ 求められるコミュニケーション能力

森川まこさん

広告制作会社勤務


本日お話をいただくのは、広告制作会社に勤務されている森川まこさんです。森川さんは2015年に本学の舞踊学専攻を卒業。メーカーのハウスエージェンシーに入社後、2018年に広告制作会社に転職されました。今日は、広告代理店の仕事はどういうものなのか、そこで求められることは何かといったこと、ご自身の経験を踏まえてお話しいただきたいと思います。
<2022.01収録>

クライアントが依頼する広告を、媒体を通じて伝達する

ただいまご紹介をいただいた森川です。
私が所属している広告制作会社は大手広告代理店のグループ会社の一つになりますが、大きくは、親会社や担当しているクライアントから依頼を受け、広告物の企画・制作していく会社と理解していただければと思います。

皆さんの中には、広告代理店業界、もっと広く言えばマスコミ業界に興味を持たれている方がいらっしゃるかと思います。
マスコミ業界と言えば、テレビ、新聞、出版といった、いわゆる媒体(メディア)を通じて情報を発信する会社を思い浮かべると思います。マスコミは、マスコミュニケーション(Mass Communication)を省略した言葉で、マスコミ業界とは、不特定多数の人々に、マスメディアを通して大量の情報を伝達することと定義されています。YoutubeのようなWEB媒体を活用したメディアもその中に含まれますね。企業=クライアントが依頼する広告を、媒体を通じて伝達するのが広告代理店の役割になります。

もう少し具体的に説明すると、クライアントと一緒になって、モノやコトをどのようにアピールすれば広く認知されるようになるのか、新商品であれば売上が伸びるのか、どんな媒体に広告を展開すればターゲットにする消費者に効果的に伝わるのか。これらの戦略を立案し、それをクライアントに提案していきます。そして、広告の枠を取るために、テレビのCM枠や雑誌の広告面を買うのが広告代理店の業務となります。
代理店という言葉が付くのは、新聞・テレビ・ネットなどの広告を掲載するメディアと、広告を出したい企業(クライアント)を繋ぐ仲介のような役割を担っているためです。

マスコミに持たれるイメージは本当なの?

私の業務は、依頼された内容の広告を一緒に考え制作することです。広告制作会社は広告代理店の企画・アイデアをカタチにすることでクライアント企業の課題解決を行います。
ちなみに、大手広告代理店は自社内にクリエイターを抱えていたり、デザインや映像などの専門性に特化した制作子会社持っていたりしますが、業界の中には制作のみを生業にする独立した会社もあり、そうした会社はそれぞれ案件ごとにアサインされ、クライアントや広告代理店と一緒になって広告戦略を作っていきます。

皆さんが、マスコミ業界に興味を持たれている理由は何でしょうか。華やかな世界に見える、クリエイティブな仕事だ、社内に自由な気風があるのではないか。私も学生時代はそう思っていました。
確かにそうした側面があるのは事実です。しかしそれは一面にすぎません。他の仕事と同様に、広告業界にも泥臭い、シビアな世界があります。

広告制作会社に中にある営業担当の役割

一言で広告制作会社と言っても、その業務範囲は多岐にわたります。私の所属している会社には、12の事業領域があります。例えば、「フォトクリエイティブ」。ここは文字通り写真撮影におけるクリエイティブの専門部署です。「映像クリエイティブ」の事業領域は映像ですね。こうしたクリエイティブの部署だけでなく、イベント関連を担う「イベント・スペースプロモーション」、店頭プロモーションの「リテールプロモーション」、デジタル領域におけるプランニングを行う「デジタルプロモーション」などもあります。

クライアントの要望に対して、どこかの一つの部署が問題解決を提示するのではなく、課題によっては複数にまたがって共同で企画を練り上げ、全体最適の解決策を立てるのです。
そうした中で、私は12の事業領域のうち「プロモーションプロデュース」という部署にいます。ここはプロモーション領域のフロントラインを担うところになります。具体的に言うと、制作会社の営業(窓口)として、クライアントとの話し合いの中で得られた課題を各事業本部とすり合わせをし、同時に生活者の行動分析を掛け合わせ、最適な戦略を提案する部署になります。

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私は営業担当ですが、クライアントに向けた営業担当は、親会社である広告代理店にもいます。私の仕事は、親会社の営業担当者と一緒にクライアントに出向き、先方の要望を聞き、それを親会社のクリエイティブチーム及び自分の所属している会社の各クリエイティブチームに伝えることになります。クライアントとクリエイティブの橋渡しの役割を担っています。そのため、私が実際に仕事をしている席は親会社の営業部署の中にあります。
クライアントは誰もが知っているような、生活者と接点のある会社です。基本的に、これらのクライアントの担当は代わることはありません。

仕事の流れをざっくりとした形で説明すると次の通りになります。
① クライアントや広告代理店の相談窓口となって、相談内容をヒアリング
② クリエイティブチームにオリエンし提案に向けて社内ミーティングを設定
③ 予算管理、スケジュール管理、著作権などの権利関係,表現方法などのリスクマネジメントなど
④ クライアントに企画提案を行い、企画が通れば制作開始
⑤ 実施に向け各所調整
⑥ 納品⇒最終金額調整

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すべてが順風満帆では進まないクリエイティブの世界

クライアントへのヒアリングから納品までの流れを述べると、順風満帆にコトが進んでいくように思われるかもしれませんが、1つひとつの工程には膨大な時間と労力がかかりますし、案件のほとんどは広告代理店のクリエイティブディレクター(広告制作現場の責任者)を筆頭にチームが組まれ、プランナー、コピーライター、アートディレクター、といった親会社のスタッフや私が所属している会社の制作スタッフ、さらには外部の制作会社も加わり進行します。
まさに総力戦です。膨大な人たちが関わっているので、全体を調整するのも大変です。

多少私の個人的なことを含めて述べてみますが、クライアントの課題や考えを、クリエイティブチームに的確に伝える力やクリエイティブチームの意思を汲み取る力等、コミュニケーションにつまずくことがあります。最初の頃は専門用語が飛び交い、ハイレベルな打ち合わせ内容についていくところから苦戦していました。しかしその打合せ内容をクリエイティブチームに正確に伝えないと、企画案が的外れなモノになります。
もちろんクライアントとのミーティングにクリエイティブの人たちが同席することもありますが、間に立つ私を含めた営業側が、橋渡しとしての役割を果たさないと、プロジェクト自体が空中分解を起こしかねないのです。

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プロとプロのぶつかり合い後に得られる達成感

クライアントに企画を提案する際は、最善を尽くして提案するように進めていますが、それでもクライアントが納得しないことは多々あります。
クライアントと何度も協議を重ね、クライアントと私たちがワンチームとなってベストなものをつくりあげていくことや、私が調整役となってクリエイティブチームと一緒に担った広告展開や、プロモーション活動により話題化やヒット商品へと導くことができたときは、とても大きなやりがいを感じました。

学生の頃抱いていた夢と現実

業務を通じて日々感じることがあります。
その一つは、こうした制作プロ集団の中にいる人たちの圧倒的なクリエイティブ力です。
学生の頃は、踊りの振り付けや舞台演出をしていたところから、アイデアを形にするような仕事をしたいと思っていました。
実際にクライアントから投げかけられた課題に対して、制作のプロの方たちが出すアイデアや発想に触れると、私の思いもよらないことばかりで、クリエイティブな才能とはこういうことを言うのだろうかと感じることがあります。
とはいえクリエイティブの世界に携わりたいという気持ちは強くあり、私には何ができるのかと考えたときに、営業として私はコミュニケーションのプロになってクライアントと制作の橋渡しになるのだ、という思いを強くしたということです。
一方で、コミュニケーション能力についても、まだまだ未熟だと思うこともあります。
クライアントの想いを汲み取る力、クリエイティブへの物事の伝え方など、毎日が勉強です。上司にも助けてもらいながら案件を進めていることも多々あります。

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人と人の繋がりを疎かにしないこと

最後に、今の会社に至るまでの私自身についてお話しします。
ご紹介いただいたように、私は舞踊学を専攻していました。モダンダンス部に所属し、学生生活はモダンダンスに明け暮れていました。
大学での授業では、踊りを通じて創造しなさいと教えられたことが、印象に強く残っています。今、クリエイティブな仕事に関わっていられるのも、踊りと広告とは表現方法は異なりますが、常に何かを創造することが体にしみこんでいるからだと思います。

就職活動は大学3年時の冬からスタートしました。クリエイティブな仕事に就きたいと、20社以上にエントリーシートを出したと思います。面接に臨む際には、少しでも先方に印象を持ってもらおうと、いざとなったらダンスを踊ろうと目論んだこともありました。
しかし、なかなか内定をいただけず、気持ちが滅入ることもありました。それでも、社会に出たい、クリエイティブな仕事に就きたいと、あの当時は必死でした。
4年次の夏に最終的に内定をいただいたのが、映像作品や映画の製作で撮影後の編集作業などを主とする、ハウスエージェンシーでした。「絶対に内定をもらうんだ」という形相が、面接の時に出ていたかもしれません。(笑)

同社には2015年に入社。配属されたのがイベントプロデュースの仕事でした。アイデアを形にするといった点では充実はしていたのですが、WEB等もっと幅広い広告分野に触れたいと思い転職を決めました。
そうしたときに縁をいただいたのが、今の会社でした。この会社との縁は、私の知人からの紹介という形でしたが、私の希望に近いということで、すぐに応募し、2018年に転職することになりました。

私自身、学生生活から就職、転職という流れの中で、何か大きなことを成し遂げてきたとは思っていません。それでも、人との繋がりを大切にしてきたことが、今に生きていると思っています。
友人関係でも仕事関係でも、人と人との縁や人脈はとても大切です。今の会社への転職もそれがきっかけだったと言えますし、いまの広告制作の現場でも、最後は人と人とのコミュニケーションを通した繋がりが大切にされています。
これから就職活動に臨む皆さんには、自己分析をしっかりと行い、自分の強みをもっておくことをお伝えしたいです。その軸がぶれない限り、どこかで道が開けます。決して第一希望の会社ではなくても、人を大切にし、自分を見つめ直す姿勢を持っていれば、充実した社会人生活が送れると思います。

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〈質疑応答〉
【学生A】森川さんは自己分析をどのようにされましたか?
私はダンスが好きで、ダンスを通じて自己表現を求めてきました。では、ダンスのどこが好きなのか?という問いから始めました。私は舞台に立つのが好きなのか?それともパフォーマンスを作るのが好きなのか?では実際に本当にやりたいことは何か?それは単なる憧れなのか?といった根本的なことまで遡ることになりました。その過程で、実際に迷走することもあったかと思います。キャリアセンターにはよく通い、アドバイスをいただき、何かを創造していくことが好きなのだという軸を、改めて自分の中に作っていきました。

【学生B】面接で聞かれたことで、印象に残っていることは何ですか?
「なぜ、当社に入社したいのか?」ということは必ず聞かれました。私は、先ほどもお話したように学生時代は振り付け・舞台製作など経験をもとにゼロから何かをつくりあげるといったアイデアを形にすることに携わりたいという思いや、ダンスを通じて人を楽しませることが好きだったので、何かを通じて人を笑顔にできるもの、そういったことを軸に志望理由を伝えていました。
もう一つは、「舞踊学専攻は何を学ぶところなのか?」ということも聞かれました。これは、他大学ではあまり見られない専攻課程だからだと思いますが、授業で何度も踊りを通じて、何かを創造しなさいと言われたことを答えたのを覚えています。この答えは一つではなく、皆さんがそれぞれ振り返って答えを見つけていくのが良いと思います。

【学生C】広告代理店の勤務体系はどのようなものですか?
基本的に、業界ではどこも同じだと思います。数年前に、広告代理店でのハードワークやパワハラが問題視されたことがありました。だからではないかもしれませんが、むしろ残業や、休日などの取得については徹底しているかもしれません。
もちろん納期が迫っていたり、編集の立ち会いなどで、寝る時間が削られたりすることもあります。良い悪いではなく、そうしたことは他業種でもあるのではないでしょうか。ただしハードワークが続いたあとは、早く帰りなさい、代休は取りなさいということは日常的に言われます。

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