資格・就職
「スポーツぢから」に「英語力」を足してみる!
八田 益之さん
■(社)日本国際人材教育協会 理事
本日は、(社)日本国際人材教育協会から八田益之さんをお招きしています。八田さんは、トライアスロンの年代別で4連覇されている現役のトライアスリートです。それではよろしくお願い致します。
<2015.05収録>
皆さん、こんにちは。まず始めに簡単な自己紹介をさせていただきます。
「英語」×「キャリア」×「スポーツ」僕はこのそれぞれを経験してきました。まず「英語」に関して言えば、現在僕は(社)日本国際人材教育協会というところで働いており、ハワイなど海外のインターンシップでグローバルな人材の育成支援をしています。
次に「キャリア」ですが、僕は外資系の企業で働いた経験があって、大手企業の新人研修にも関わってきました。また一昨年には、法政大学の大学院で最新のキャリア教育理論を学びました。最後に「スポーツ」ということでは、2010年からトライアスロンを始めて、エイジグループ(アマチュア部門)の年代別で年間4連覇中です。今日もここまで自転車に乗ってきました。
今日のお話のテーマはずばり、「高偏差値大学に負けない就活」です。皆さん、学歴フィルターって聞いたことありますか?一般に頭がいいと言われている大学は就活でも有利と言われています。でもそんな高偏差値な大学生にも負けない、いや、勝ちに行く就活戦略についてお話しします。
ところで体育大学生の強みと言えば何でしょうか?4年間一生懸命「体と心」を鍛えてきたこと?これは企業からかなり評価されます。でも、「頭も筋肉」だと思われちゃうのはどうでしょう?つまり、4年間「体と心」を鍛えてきて、なおかつ「頭」もちゃんとトレーニングしてきたとアピールできれば最強ですよね。「体と心」を鍛えてこなかった「頭でっかち」な学生に絶対勝てます。
自分をアピールする時に気をつけなくてはいけないのは、高偏差値大学と同じ土俵には乗らないことです。たとえば、TOEICの点数で勝負したら勝てないかも知れない。向こうはそういうことを四六時中やってるわけですから。スポーツに時間とエネルギーを使ってきた体育大生ならではのやり方で勝負すべきです。そのためにまず、2つのことを押さえましょう。
1つには、「企業が新人から若手社員に望む成長を知ること」です。
皆さん「守破離」って聞いたことありますか?よく武道などで言われる師弟関係のあり方のひとつですが、企業でも新入社員には、最初の3年くらいは「仕事の型」を身につけてほしいと思っています。その後、独り立ちして仕事を発展させ、創造していってほしいと。だから最初の3年間は、仕事の型を覚える期間としての「守」です。
よく仕事の型の基本は、「PDCAサイクル」と言われます。まずPはPlan、計画です。そしてDはDo、実行です。ただがむしゃらに一生懸命やるのではなく、自分の仕事がチームに与える影響も意識すること。実行したら次はCのCheck、それを評価します。そしてさらにAのActionで改善します。でもこういうことって、実はスポーツの現場で常にやっていますよね。
ただ仕事がスポーツと異なるのは、ゴールをきちんと押さえてから取り組む必要があるということです。スポーツの場合は勝つためにというゴールは自明なので、わざわざ意識しないかもしれません。でも仕事の場合は、何のためにそれをやるのか理解していないと見当外れのことをしてしまったりします。
さらに仕事の現場では、「指示通りに動く」ことと「自分で考えて動く」ことの両方が必要になります。体育会系の人は指示通り動ける人は多いかもしれません。でもこれ、両方やれたらもっと価値が出てきますよね。スポーツでも、より上を目指すためには自分で考え自ら動くことが必要です。ぜひそこを意識してみてください。バイトの時もそうです。
2つ目は、「チームで目標を追求した経験を活かすこと」です。
そういう経験は体育系ならではの醍醐味だと言えます。高偏差値大学の学生は、論文とかプロジェクトとかTOEICの点数とか資格とか、「考える力」をアピールしてくるので、その中で体育系の学生が勝機を見い出すには、いかに自分の強みを生かせる分野に持ち込み、自分の土俵で勝負できるかです。
ずばり体育会系の学生は、「チームで目標を達成するために4年間真剣に追求し続けた経験」をアピールすべきです。その時に、単なる根性論とか精神論ではなく、「目標に到達するための実践的な思考」みたいなことをきちんと説明できたら、それはかなりの差別化になります。文系の学生にはそういう経験を積む機会がないですから。
そしてそれを聞いた採用側が、「入社3年後の(つまり仕事の型を覚えた後の)成長余地(ポテンシャル)が高い人物だ」と判断する可能性が高まります。日本企業の新卒採用は、ポテンシャルへの期待度で判断されます。
まとめると、体育大生は「チームで目標を到達するための思考力があること」もアピールする。そのために、どんな「情報」を収集して分析し、どう「PDCAサイクル」を回してチームに「貢献」したか、そして自分はそれによってどう「成長」できたか、何を学んだかを説明できるようにすることです。
次に「情報と英語力」についてお話します。
日本には1億以上の人口がいますが、世界の中での日本語人口は約1.2億人、約1.7%です。それに対して英語は、イギリスやアメリカだけでなく、シンガポールやインドなどいろいろなところで公用語として使われていて、さらに日常生活は現地語だけど仕事では英語というところも結構あり、英語人口(公用語)は約18億人、世界の25%を占めています。
これは日本語人口の15倍です。この15倍がどんな差として現れるのか?たとえば出版で言うと、日本はそれなりに人口もいるし、経済力もあるし、書籍への関心がある人も多いからある程度本は売れています。でもそれが英語の本になるだけで、マーケットは15倍に跳ね上がります。同じ内容を英語で書くだけで、世界中の人に読んでもらえるチャンスが生まれるんです。
トライアスロンの世界でも、英語で書かれたトライアスロンの専門書が数十万部も売れたりします。印税で言うと数千万円になります。そうなると張り切って書きますよね。日本語の本では100万円を超える印税収入は難しいので、一流コーチはそこに情熱をかけられず片手間仕事になってしまうんです。
ここでちょっとスライドを。誰だかわかりますか?為末 大さんです。為末さんがブータンで、現地の少年に陸上の指導をしているところです。英語ができると、アスリートは指導できる相手も増えるんですね。
採用面接で、「私はチームを強くするために、英語が必要だったので、英語力は不十分ながらも、それを使って成果を出しました」と堂々と言えれば、別にTOEICで900点という隣の東大生に気後れすることはありません。
ただ間違えていけないのは、ほとんどの企業・団体にとって欲しいのは結果であって、英語は仕事の目標を達成するための「手段」に過ぎません。アスリートも「競技で必要な情報を探していたら、たまたまそれが英語だった。」だから英語を手段として使ったということです。実際そういうケースは多いんです。
最後に、皆さんがどうやって高偏差値学生とは異なったやり方で英語を使えるようになるかという話です。
アスリートは時間がありません。みなさんもそうでしょ。部活をやっていたら自由な時間はそんなにとれません。投資効果=成果÷労力なので、労力を最小化して成果を最大化する戦略を選ぶべきです。コツは、①対象を絞る(チームに重要な課題だけ英語で調べる)、②楽に読む(ITツールを活用)です。
アスリート流英語活用術の具体例をあげます。ツイッターやってる人いますか?自分の好きなアスリート、英語で発信している海外のアスリートがいたら是非ツイートをフォローしてみてください。ツイッターはもともと短文しか発信しないから単語レベルが理解できればいい。同じ競技をやっていればだいたいの状況は共有できるので、自分が思っている以上に理解できます。読み続けることで、わかることがどんどん増えていきます。
一流アスリートがブログをやっていて、そこに先ほど言った「チームにとって重要な課題」に関係することが書かれていたら、Google翻訳などを使って大まかに理解してみてください。英語の授業みたいに精読する必要はありません。何を言っているのかわかればいいんです。写真とか動画とかも総動員してだいたい把握できればいい。
そして、そこで得た情報の成果を記録するんです。情報を活用して得られた成果を、ツイッターで発信したり、ブログを書いたり、部のHPに載せたり...。そこは別に英語でやらなくても日本語でOKです。そういうことができてくると、単に英語の知識というレベルを超えて、世界がぐーんと広がります。
国際試合に出かけて海外の選手と話すこともできるし、facebook上で情報交換もできます。アスリート同士は競技を共有しているという前提があるので、コミュニケーションを取る上でめちゃめちゃ有利なんです。そこを皆さんはうまく使いましょう。
この写真はトライアスロンの学生王者ですが、彼はfacebookでスペインの人と知り合って、ホームステイをさせてもらいながら武者修行してきました。こんな風にうまくことが運ぶのも、同じスポーツをしているという前提があるからです。もちろん女性の場合、気をつけないといけないこともたくさんあると思いますが。
最後に、僕が理事をしている日本国際人材育成協会の宣伝を少しさせてください。海外で長期インターンシップをするプログラムをやっています。留学よりもずっと安価で、中身の濃い経験ができます。語学留学に1カ月行っても実は異文化に慣れるだけで終わってしまうことも多いんですが、インターンシップに1年くらい行ければ、本当の意味での海外体験と成長ができると思います。